星と鳥と風~22 旅は道連れ2

夜が明けると、良い匂いがKの家(お店)に漂っていた。
起きると会いたかったKのパートナーのAちゃんが、せっせと朝ご飯を作ってくれていた。

「あ、星、おはよ〜よく寝れた?」
「おかえり」
と言って再会のバグで出迎えてくれた。彼女は心なしかより一層逞しくなっていて、どこか
【覚悟】のようなオーラを私は感じていた。

Aちゃんも私の大事な友達で、人として、料理人として、母として、そして、本当に素晴らしい絵描きとしても心から尊敬している。
私のパートナーの事も、とても愛してくれて、Kと2人で営むお店での周年祭なんかには、僕らを起用してくれたりもした。私の彼女のライブを見つめるその純粋で底知れぬ暖かい眼差しを、時折思い出しては、私は平常心を取り戻すのだった。

いつかは忘れたが、Aちゃんが、「絶対私達、家族だった時があるはずだよね」と言っていた事があったが、私も心から本当にそう思う。

以前お土産を送ってくれた事があった。その中に、手紙が入っていた。最高に勇気づけられる純粋なるままに連なった言葉達が胸に沁みた。
何故か会社でそのお土産の入った段ボールを開けたのだが、会社の仲間が
「うわ!何!その絵!凄い!」と言っていた。
私は訳がわかっていなかった。

手紙は手紙でもあったが、表面は絵になっていた。
私をモチーフにしてくれたのかは定かではないが、真ん中に小さな一番星が描かれていて、その星が多種多様、様々な色と光を放っていた。
あまりにも美しく放つその絵から、しばし目が離せないでいた。

【私は私にあまり自信がないまま生きてきた】
そんな私の事を、こんなにも色鮮やかに表現してくれた人は初めてだった事と、その絵の様を見て、やっと
「私は光を放っても良いのだ」
と思えた。
Aちゃんの絵が、私を闇から引っ張り出してくれた事を、これを綴りながら思い出して、また感謝が溢れた。
【彼女が描く絵にはそんな力が宿っている】
そんな最高なAちゃんと最高なK、それに天使2人。
でやってきたお店だからこそ叶えてきた夢も沢山あった。
その一部始終を見てきた。本当に素晴らしい瞬きであった。来る人々、皆んなが必ず笑顔になって、人種も性別も年齢も時も何もかもが只々ここにいる【今】を生きる幸せを感じとって帰っていく。
そしてまた幸せを持ち寄ってこのお店に自然と帰ってくるのだ。

意図しない
純粋な循環

【こんな世界を創りたい】
人知れず私は私に約束をした。

そんな家族達と、美味しい朝ご飯を皆んなで頂いた。
そして

 【私は今だに旅のいく先を迷っていた】

Kが入れてくれたブラックコーヒーで眠気を飛ばしながら、昨日Kが連れて行ってくれた廃キャンプ場に戻るか。九州に向けて南下しながら、今夜の宿を探すか。どちらにせよ私は言葉を落とし込みたくて、それらの主旨をKに伝えた。Kはあっさり
「書こう書こうとしてるだけで、実は書く為の時間じゃないんじゃない?」と応えた。
本当にKは、時折鋭い目線とタイミングで、重要な言葉をくれる。私はハッとした。
【そうだな。まだ旅の途中、今は旅に集中するべき時かも】そう思えた。
書かなきゃ、という変な自分に与えたプレッシャーみたいな物をKに一瞬で引き剥がされた。
【本当に頼れる最高なbrotherだ】
それに書かなきゃと思ってかける物でもなかった事を思い出した。

するとまたKが、「俺は山口に用事があって、面白い陶芸家さんの所にミーティングに行くんだけど、その人達と会ってみるのも楽しいかもよ」と言ってきた。
私はお言葉に甘えて、今しばらくKと行動する事にした。

Aちゃんと再会の約束をして、我々はお店を後にした。

帰り際にAちゃんがお手製のお稲荷さんを渡してくれた。
「お腹が減ったら、Kと一緒に食べてね」
Aちゃんにしか握れない、可愛らしいお稲荷が二つづつ入っていた。

(Aちゃん、本当にいつもありがとう。必ずまた会えるね)

kはまだいくつかの用事もあったので、kのミーティング先の陶芸家さんの家に各々集合する事になった。時間もまだたっぷりあった事もあり、私はまた居心地の良さを求めてI君のお店に立ち寄った。
I君も、「昨日ぶりですね〜ゆっくりしてって下さい」と満面の笑顔で迎えてくれた。本当に優しい人だ。
楽しい時間はあっという間に過ぎて、気がつくとお昼に来たはずの私は、時計を見たらとっくに約束の19:00を回っていた。するとKから電話があった。
(しまった!陶芸家さんへのお土産にKが用意したお酒が、私の車に入っていた)
I君と固い握手を交わして、私は急いで車を山口方面へと走らせた。

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