遺伝と英才教育
昨日の記事にも引用させてもらった安藤寿康氏著の『日本人の9割が知らない遺伝の真実』という本について今日は書こうと思う。
世代がばれるが、読みながらへぇボタンを連打したくなるような本でKindleでハイライトをたくさんつけた。大変学びが多い本だった。
「行動遺伝学とは何か」から始まり、何が遺伝して何が遺伝しないのか、’行動遺伝学から見た教育・子育ての問題点、遺伝で多くが決まるが私たちはどう生きていけばよいのか、等わかりやすい語り口で書かれている。
遺伝についての知識は高校の生物で習うエンドウ豆の劣性・優性遺伝くらいしかなかった私でも十分に理解できるように書かれているので、少し興味がある程度の方でも楽しめるはずだ。
私が驚いたのは遺伝の形質は年を取ると共に徐々に強く表れてくるということ。45歳あたりがピークだと言う。
この事実を元に、著者は英才教育の意義を問う。
「十で神童、十五で才子、二十過ぎればただの人」という言葉があるそうだ。きっとこれを考えた人は行動遺伝学なんて聞いたこともなかっただろう。でもこの言葉は遺伝に裏付けされている。
子どもの頃から将来を渇望されるスポーツ選手や、音楽家がいつの時代にも表れるが、そういう子どもたちがまっすぐその道を極めていくこともあれば、色々な理由で違う道を選択するのは周知の事実だろう。
例えば卓球の福原愛選手は、子どもの頃から天才少女として注目され、数々の輝かしい功績を残した。
これを読んで私は、最近話題になっている閉鎖された港区のインターナショナルスクールのことを考えずにはいられなかった。
というのも、その幼稚園の学費は年間400万円にも上るというのだ。文部科学省の調査によると私立幼稚園の年間費用平均は31万円だというから13倍以上の価格設定になっている。
当然、それだけの幼稚園に子どもを通わせられる財力のある親の元に生まれるというのは幸運なことだが、果たして400万円分の学びがあるのだろうか、という疑問が浮かぶ。
インターナショナルスクールというからには英語を学ぶのだろうが、大人になってから英語を学び、アメリカで仕事をしている身からすると、英語が第一言語じゃなくても第一線で活躍している人などいくらでもいる。
私たちが思っている程、英語の発音がネイティブ話者のようであること、英語が第一言語であることは重要でないとアメリカに来て感じる。
それ以上にその仕事ごとのスキルが重要視されると思うのだ。
例えばこれから英語圏に行くことが決まっている、今後移住するなど差し迫った理由があれば、こういうインターナショナルスクールで極力子どものトランジッションを楽にするというのは一つの手だと思う。
私の周りには、両親とも第一言語が英語以外だが、アメリカで育ったという友達がたくさんいる。
学校では英語、家では両親の母国語と、私はそれが第二言語習得の理想的な環境だと思うが、いずれにせよ第二言語の習得には本人のやる気・興味が大きく関わっているなという実感がある。
例えば、私たちの友達に日本系アメリカ人の双子がいるが(両親とも日本人で日本で育っている、双子はアメリカで生まれアメリカで育った)、同じ親に育てられ、同じ家庭環境だったはずなのに、二人の日本語の習得度には差がある。
一方で、両親ともメキシコ系移民の家系でアメリカ生まれ、英語ネイティブの家庭に生まれた元同僚は家では英語しか話さないというが、スペイン語を巧みに操る。
幼稚園児の時点では今後子どもが何に興味を示すかはさっぱりわからない。もちろん個人的な見解だが、その時点での高額投資は私なら選ばない。
6月21日 水曜日
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