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陪審員義務という壮大なドッキリ

最近「Jury Duty」というシリーズをAmazon Primeで観た。
Jury Dutyとは日本語で言うと「陪審員義務」で、裁判の陪審員に選ばれた12人+2人の補欠というメインキャラクター達で構成される。

割と新しいシリーズで日本で公開になっているかわからないので、簡単に概要を説明する。
このシリーズの面白いところは登場人物の内の一人だけがドラマだということを知らないということ。
いわば、壮大なドッキリな訳だ。

この一人は全くの素人で、陪審員に選ばれて裁判所に現れる。
この陪審員に選ばれるというのは割とよくあることで、実際に陪審員として裁判に参加する可能性はそこまで高くないが、陪審員として裁判所に来てくださいというお知らせはアメリカの大人なら受け取ったことがある人が多いと思う。

その手紙を受け取った=陪審員になる、という訳ではなく、手紙を受け取る→裁判所に行く(裁判所にすら呼ばれないこともある)→陪審員選考、といった流れで、実際に陪審員として裁判に関わる人数はごくわずかだ。

ちなみに、アメリカでは裁判の撮影は許されているが、陪審員の撮影は許されていないので、この「Jury Duty」の舞台である裁判は全くの偽物だ。
日本では裁判の撮影は許されていないから、被告の様子を描いた絵などがニュースで登場するが、こちらでは裁判は公的な記録であるため、大きな裁判だと中継をやっていたりする。

最近では、息子と妻を射殺したとして起訴されたサウスキャロライナ州の弁護士の裁判が中継され、多くの注目を集めた。
少し前なら、ジョニー・デップとアンバー・ハードの離婚裁判も連日生中継された。この裁判は職場でも連日話題になり「どう思う?」「やっぱりアンバーが悪いよね」などと空き時間の話のネタとなった。

このシリーズでは当然陪審員たちが主役なので、陪審員にフォーカスして話は進むが、まずそのうちの一人が著名な俳優だ。
その時点でまず考えにくい。
ただ、全編を通して95%有り得ないが、陪審員に選ばれるという非日常の中で「もしかしたら」と思わせるリアリティがあるのが面白い。

その俳優目当てで裁判所にパパラッチが来るのをきっかけに陪審員たちは家に帰ることを禁止されてしまう。
そもそも、この裁判は民事の小さなケースで、普通だったら1日で終わるようなものを弁護士のミスや、その他諸々で長引いていく。

こうした経緯で、陪審員たちはホテルと裁判所の往復をすることになるのだが、本来だったら陪審員同士が私的に会話するのは認められていない。そこは、ドラマということで、陪審員同士で恋愛関係に陥ったり、誕生日パーティーを開いたりなど色々なことが起こる。

色々と有り得ないことが起こるのだが、ある程度実際の裁判の流れに基づいているので、アメリカの裁判制度や陪審員義務をほとんど知らなかった私にとっては勉強になる点も多かった。

最後の種明かしもとても面白く、「この裁判は偽物です。あなた以外は全員役者です」と裁判官が告げるのだが、その彼の反応がまたとてもリアルだ。本当に知らなかったんだ、と納得できる。
彼はしばらく困惑した表情を浮かべ、理解できていないようだった。

そして、彼は数々の部屋にどれだけ隠しカメラが仕込まれているかを明かされ、更にモニタールームに連れていかれて撮影スタッフと初対面する。
「今でも何が起こっているかわからない」と言うが、本当文字通りの心情だっただろう。

撮影スタッフや役者がリハーサルを重ねて来たこと、本番はリハーサル通りにいかず、役者たちのアドリブで何とか乗り切ったことなど裏話もその場で披露される。
ドラマであり、劇場でお芝居を見ているような、だからこその緊張感とアクシデントがある。

ドラマであり、ドキュメンタリーであり、コメディであり、とにかくコンセプトが新しい!と思った。
日本でも公開されるといいなと思う。

6月22日 木曜日

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