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派遣雇用スパイラル!派遣社員から抜け出せない構造は、こうだ!

私は25歳まで深夜のコンビニでアルバイトをして生計をたて、27歳で大手広告代理店の派遣社員になりました。その後、運よく相性の良い上司と巡り合い、その会社で正社員として登用してもらいました。今回はその経験を基に、なぜ「派遣社員が正社員になれないか」をテーマに書きたいと思います。

①正社員になりたい派遣社員はたくさんいる!

株式会社ウルクスという会社が2018年に「派遣会社に勤務中・勤務経験のある269名」を対象に行ったWebアンケ―トでは、派遣社員の40%が「今後、正社員として働きたい」と回答しました。


また、日本人材派遣協会が行った調査では、国内の派遣社員の人数は約142万人。この内の40%が正社員雇用を希望しているとすれば、約50万人が不本意な働き方を余儀なくされているということになります。


②なぜ派遣社員は派遣社員から抜け出せないのか!?

なぜ、派遣社員は正社員になることが難しいのでしょうか?
ここでは3つのポイントを挙げてみます。

  1. コミュニケーション不足や遠慮

  2. 派遣社員=簡単な作業

  3. 派遣会社の囲い込み

1. コミュニケーション不足や遠慮

私は派遣社員としての就業先でそのまま正社員に登用してもらいました。正社員に推薦してくださった当時の上長は、私の立場や普段の言動から「この子はきっと正社員になりたいと思っているに違いない」と思ったから登用に動いたはずです。

私の場合、男性/未婚/当時27歳と、よっぽどの都合がなければ「正社員になりたいに決まってるぜ!」というスペックです。なので、上長は私を推薦する際に、「人事や役員とどう交渉するか」みたいなことでは悩んでも、「そもそもこいつは正社員になりたいのか?」という迷いはなかったはずです。

しかし、これが女性/既婚者/35歳だったらどうでしょう?多くの人が悪意ある差別ではなく、「自ら派遣を選択しているのかな」と思うのではないでしょうか。では、そんな疑問が沸いたときに、会社が本人に「〇〇さんはワケあって派遣社員として働いているの?」と聞くかというと、ほとんどの場合、聞きません。

もし、聞いて「本当は派遣社員として働いているのは不本意なんです!」なんて言われても、よほどの権力者でない限り力になれません。まるで見捨てたかのような罪悪感が残るだけです。だから、多くの人は派遣社員の人に働き方について何も聞かない・言わないのです。

こんな状況なので、正社員の人たちは派遣社員の人たちが「どういう働き方を望んでいるか」を知ることすらありません。(なかには関心がない人もいるでしょう)

2. 派遣社員=簡単な作業

みなさんが働く会社で事務派遣の方々はどのような仕事をしているでしょうか?仕事というものの多くは、ひとつの塊のなかでも作業の難易度にムラがあり、「難しい作業」と「簡単な作業」に分けることができます。

会社では効率性を追求し、前者の作業を正社員が後者の作業を派遣社員が担うケースが多いはずです。そう、会社という組織では、派遣社員は簡単な作業しかやらせてもらえないポジションとも言えるのです。

そうなると、仮に自身が高いスキルを持っていたとしても、アピールする機会がありません。転職活動をしても、面接担当からは「これまで作業しかしてこなかった人か・・・」なんて見られ方をしてしまうのです。

また、単純作業以外に従事しない期間が長くなると、「責任の重い仕事が自分にできるだろうか」と、本人の自信が失われてしまう場合もあります。私は過去に、作業スキル、コミュニケーション能力が高いにも関わらず、自分自身に過剰に謙虚な派遣社員の人たちを何人も見てきました。

3. 派遣会社の囲い込み

作業スキル、コミュニケーション能力が高く、かつ謙虚すぎる人。皮肉にも、こういった人たちは派遣会社にとって宝です。派遣会社としては時給に間接費+利益分を上乗せして儲ける仕組みなので、「人を替えてくれ」と言われるのが最も面倒なのです。募集広告を出し、顔合わせをし、初日は現地訪問など、手間しかありません。

だからこそ、派遣会社は(潜在的に)優秀な派遣社員には「他社で正社員になってほしくない」と考えてます。手放したくないのです。

しかし、私自身がそうだったように、実際は同じ会社内で派遣社員から正社員になるケースは決して少なくありません。「他社で働くことになりました」とか、テキトー言って、サラっと離脱するケースもあるのです。

③正社員と派遣社員で、そんなに仕事が違うのか?

↑で、会社では業務を「難しい作業」「簡単な作業」に分け、派遣社員は「簡単な作業」を担当すると書きました。

ではその2つの作業の間には、越えがたい壁があるのでしょうか?

私は正社員として広告代理店で数年勤務し、有名な外資系コンサルとも一緒に仕事をしたことがありますが、それでもこの問いへの答えは「No」です。

別にアーティストになろうというわけではない。せいぜい会社で求められる仕事の難易度は、たかが知れてます。管理部門であれば定型業務、業務改善、チーム内での簡単なファシリテーション。営業であればプレゼンスキルや別の部署との調整能力など、所詮組織のなかで立ち回るだけです。

「難しい作業」「簡単な作業」は断絶されたものではなく、間違いなく地続きです。派遣社員として作業レベルやコミュニケーション能力が高い人は、おおよそ間違いなく正社員になっても立派に働けるでしょう。

④責任は「構造」にあるが、解決は・・・

そう考えれば、やはり派遣社員の人たちが派遣社員を続けざるを得ない責任は「個人」にはなく「構造」にあるように思います。逆に言えば、正社員に登用された人には、偶発的な要因が働いたと考えられます。(行動力があるほうが、ラッキーパンチが当たりやすいことは確かでしょうが・・・)

しかし、この問題はそう簡単には解決できません。派遣社員のような制度があるのは日本だけではありません。派遣労働が世紀の悪法だ!と言うのは簡単ですが、その背後には社会構造が「それ」を求めたという、力学も考えなければいけません。

noteでは、日常生活に起こることを、難しく考えることにトライしていきたいです。そしてそれが読み手の方々にとって、少しでも参考になればと思います。

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