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『余命10年』を読んで

生きるっていうのは、何かを捨てていくことではなくて拾い上げていくこと。
死ぬっていうのは、失うことではなくて残していくこと。

20歳、この本と出会えてよかった。

3回生になり、就活、ゼミ、授業にバイト、忙しい中でも将来への期待が隠しきれない時間を過ごしている。
何をしたいのか、どうしたら自分は幸せになれるのか、そんなことを自己分析で考えながら過ごす毎日だ。

しかし、ふと考えることがある。
「この先何十年も同じ仕事をしていかなくちゃいけないのか」

自分には決められたように「何十年」という未来があると思っている。
それが当たり前で、疑いようのない将来のように。
そして、その何十年で、若さ、希望、選択肢、自由、そういうものを失っていくのか、そんなことを考えて、過去に戻りたい!なんて友達と話している。
きっと色々なものを失っていくのだろう、と思っていた。

『余命10年』
将来、未来、そういう言葉を当たり前のように聞き、当たり前のように話す自分には考えられもしない最終回の予告のよう。
初めてタイトルを見た時、ただただ、切ない話を予想した。

しかし、予想は前向きに裏切られた。
余命宣告をされた主人公が、ただただ失う毎日を生きる、そんな話じゃない。

10年という時間の中で、自分にとって大切なものを見つけて、拾い上げていく。それまでの時間で捨ててきてしまったものを丁寧に。時には絶望しそうになりながらも、ひたすら前を向く。
そして、死に向かう中で、自分が生きた証を残していく。漫画でも、言葉でも、想いでも。「死ぬ」という文字を見ると、何も残らないように思えるけど、きっと何かは残る。残るように生きる。そんなことを教えてくれる話だ。

自分が文章に書けるような単純な話ではなくて、言語化が難しい。
ただ、この本を読み終えて思ったことは、「当たり前の毎日をいきよう」ということだ。
「時間を大切にしよう」と「言いたいこと、伝えたいことは伝えよう」とかそんなことは当たり前で
この先いつ死ぬか分からないんだから、とかそんな感想が浮かんだりもした。
けど、そうじゃない。

「就活いやだー!」とか愚痴って、時間を無駄にして、バカなことをして、そうやって生きていこうと思う。
そうやって生きて、やっと、死ぬまでになって人生が愛おしくなるのだと思う。
初めから終わりが見えてる人なんていない。
終わりが見えてたら、どういうエンディングを迎えたいのか、そんなことを考えながら一生懸命生きるだろう。
だからこそ、バカなことが出来たり、時間を無駄にできるのは「終わりが見えていない人」の特権なんだと思う。

そうやって生きていって、最終回近くの20話くらいになったら、伏線を回収するように、捨てていったものを拾い集めていこう。きっと、そこまで進んだら何を捨てたのかも忘れてるかもしれないけど。笑

その最終回は意外と早く来るかもしれない。
そうしたら、覚えているうちに拾い集めて、それこそ「時間を無駄にしない」生き方をする。

拾い上げて残していこう、自分の人生の痕跡を。

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