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介護予防は誰のもの?【筋肉の勘所その2;不使用で起きる変化~】

 今回のテーマは【筋肉の勘所~その2;不使用で起きる変化~】です。

 前回は筋肉には色があるという内容でした。赤筋(=赤味の強い筋肉)と白筋(=赤みの薄い白い筋肉)の2種類があり、赤筋は持久力の筋肉で、白筋は瞬発力の筋肉でした。
 さらに、下肢の筋肉は長距離を移動することが目的なので赤筋が多く、上肢は細かい運動を行うことが目的なので白筋が多いのです。

 さて、本日はそんな筋肉について使わない(=不使用)ことにより起こる変化について考えてみたいと思います。

 こういった研究は、宇宙で暮らすための身体の変化を調べることを目的としてさまざまな実験が行われ、その結果が老年期の身体の変化についての研究に応用されています。たとえば、2008年の朝日新聞には、アメリカのNASAの研究で、被検者は90日間寝たまま生活を行いその対価として1万7千ドルの報酬が支払われるという記事が掲載されていました。

 車いす生活の方を思い起こしてみてください。足腰の力が衰えて立ち上がったり歩くことは困難になりますが、箸は使えたり字はかけたりします。脚力の衰えが先行していると言えます。
 実は私たちヒトの身体は、下肢の筋力から衰えていることが分かっています。私たちがが心身の衰えを自覚するのは、特別な場合を除けば、今までできたことと同じことをしたときに疲れを感じるようになった(=持久力が低下した)ことがほとんどです。

 サルコペニアという言葉をご存知かと思います。筋肉減弱症と称されますが、下肢の筋力の低下と関連性が高いと言われています。サルコペニアは加齢が原因の1次性のものと、栄養不足や動かない事など加齢以外の原因による2次性のものなどがあります。いずれにせよ、高齢に向かう身体の変化として、加齢+αの理由により、下肢の持久力を中心とした筋肉が減弱していくことがは避けられないのが現実です。

 筋の委縮についてのラットを使った研究では、筋肉は不使用により筋肉内のミトコンドリアが減少して赤筋が白筋に変化していく(=持久力が低下する)ことが分かっています。さらに困ったことに、一度白筋化してしまった元赤筋は赤筋に戻らないことも分かっています。
 ただし、白筋の中でも比較的持久力の高いピンク色の筋肉には変化できるので、持久力の回復は可能です。

 また、筋力の低下速度についても、不使用にした最初の10日間で20%という急激な筋力低下が起こり、その後も緩やかに筋力低下が進むことが判明しています。さらには、20代の若者を対象とした研究で、不使用の期間から回復するためには不使用の時間の3倍の時間が必要であると分かっています。

 たとえば、風邪で2日間寝込む(=不使用)と、回復にその3倍すなわち6日間必要で、風邪で寝込んだ日から数えると2+6=8日後に元の状態に戻ることになります。風邪で寝込むとその後1週間は調子が悪いことになりますが、皆さんの実体験と合致しますか?
 このようなデータがあるからこそ、最近の入院ではなるべく不使用(≒寝たきり)の時間を減らし、多少の痛みがあっても手術の翌日から動きましょう!ということになるわけです。

 逆に言うと、入院期間が1ヵ月あったとすると回復には3ヶ月必要ですから、頑張っても(20代の若者でも)、入院前の体力に回復するには入院から4カ月後であり、老年期の身体であれば6か月は必要であろうというこです。
 早く回復したいと焦る気持ちはよくわかりますが、焦っても回復に必要な時間は変わらないので、より効果的で効率的な回復方法については、リハビリテーション専門職に相談していただくのが最善だと思います。 

 体力低下については、日常生活における活動量の低下も入院による不使用と同じです。その意味でも、多少の疲労や痛みがあったとしても持久力を落とさない(=赤筋を維持する)ように、毎日の生活で”人に頼る部分は最小限にして”、自分の力で自分のペースで行うことがとても大切です。

 次回は、”人に頼る部分は最小限にして”自分の力で自分のペースで行うことについて考えてみたいと思います。

 親が子供へ、子供が親へ、忙しさや気遣いでなかなかそれぞれの”おもい”を”カタチ”にしにくい、そんな気持ちの橋渡しとなれるよう、りはっぴぃ代表で理学療法士で団塊ジュニアの鹿島雄志が、理学療法士としての専門性と子を持つ親としての想いを通して、大切な親世代への応援・支援を少しずつカタチにしていきます。


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