【詩】焼野原

感性は、日だまりのなかにある淡い緑色をしている、と知らないうちに誰かが決めたのだと思う、見ず知らずの草原を、原風景と見紛って、運命とこじつけて、懐かしむように思い浮かべながら、綺麗な情景ばかりを思い返し、そうしてきみは、人に優しくする。優しさが豊かさだと勘違いして、思いやりが光の色をしていると勘違いして、だから、「他人に攻撃的になるのは、現状のあなたが満たされていないからですよ」ときみが言った瞬間から、きみの瞳の上に広がる景色が、いつしか焼野原になればいいと思ったのだ、ぼくは。虹彩の輝きなんて、ぜんぶ偽物で、どこかに射している光を借りてきてるだけの水晶体、世界中の色もすべては一介の情報でしかなく、だから殺意だって緑色でいいし、日だまりの草原だって黒色でいい、どんなに綺麗な花だって人を殺す、豊かさを謳って、優しさを騙って、理解者を気取って、そうして誰かに定められた感性のまま、死んでいけよ、神様擬き。吹きすさぶ風で、飛ばされてゆく枯れ草、この世界に、きみのための感傷の道具なんて、どこにもないよ。

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