5 余生
余生。
「まるでそうじゃない部分があったみたいな言い方をする。」
余生。
「まるでそうじゃない部分があったみたいな言い方をする。」
僕はひとりでそう呟いて、ただ目的もなく冬の公園を歩き続けていた。さながら犬のように。
逆説的に、それはきっと、満たされている人が創った言葉だ。僕はただ、日記を書こうとして、何度も挫折しているような僕のことを、無条件に面白いと言ってくれる、そんな誰かが、いつしか現れてくれるのをずっと待ち続けていたのだ。
ねえ!(まるで大人の間違いを指摘する子どもみたいに)生命の誕生の瞬間は尊いと言うけれど、誰ひとり、その劇的な瞬間を覚えていないよ!
笑笑。
つまり、みんなの人生、きっと、生まれた瞬間から余生だ。
誰かが楽しそうに笑い合っている、そんな場面を横目で通りすがりながら、けれどもその声は、まるで海鳴りのように、僕の頭のなかで響き続けていた。