【詩】魔法

泣きながらぼくは、この世界で一番綺麗な死に方は何かを探し求めている。
海の底に沈んでゆく、大火に燃やされたまま灰になる、ガスで汚れない体のまま死んでゆく。想像の中でだけ、ぼくは自由に綺麗に死ぬことができて、その想像はぼくのなかで血液と一緒に流れてゆく。眠るのが心地いいのはきっと死ぬことに似ているからだ、そう思って夢見るだけでぼくは炎天下のなかでも歩くことができていた。できていたはずなのに、そんなごく個人的な想像も、知らないあいだに誰かに見破られて、「どうせ死ねないんでしょ」と言われてしまったから、あっという間に錠剤が水の中に溶けるみたいに、ぼくの中にあったなにかが消えてゆき、ぼくは身体を持ったままの亡霊になる。
けれども亡霊は、人を呪うことしかできないから。人を恨むことしかできないから。だから、だからさ、たとえ死ねなくても、死にたいと言うことを許してよ。
死にたいはきっと、亡霊に対する蘇生魔法です。





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