【詩】春生まれ

朝が来るたびに死にたくなるから、もし世界のすべてが夜になったのなら、この死にたいという気持ちも、きっと綺麗さっぱりなくなって、眩しそうに目を細めたり、思わず顔をしかめたりすることも、同じようになくなるのかもしれない。頬を伝う涙と一緒に、そんな思考のすべてが、わたしの頭のなかだけで完結していた。反証なんて考えたことすらなく、想像にすらなれない情景に、季節を創り出す力なんて当然のようになかったよ。
季節なんてどうでもいいと言うあなたがずっと羨ましかった。
死にたいと思ったときにいつも春が来るなんて、ずっとずっと気のせいで、
夏に死にたくて、秋に死にたくて、冬に死にたくて、
けれども季節はずっと巡って、今見ている桜は確かに鮮やかで。
咲いた桜の花に思わず見惚れてしまうのも、生まれたときからあらかじめ決められていた感性なのかもしれなくて、それで、そんな単純なことを想って、また死にたくなるけれど、わたしは20になる。花吹雪に「どうせ死ねないんでしょ」と言われながら、来年も桜の木の下で、年を取るような気がしている。

もうすぐ初夏がやって来るね。

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