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詩まとめ

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詩のまとめです。感情が滲み出てくるような詩を書きます。
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2022年4月の記事一覧

【詩】世界

あなたの世界だけがすべてではないんだ

そんな風に声を荒げながら言ってくるきみはきっと、どこまでもきみの世界だけがすべてだと思ってる

奇遇ですねぼくもなんですぼくもぼくの世界だけを正しいと思っていますだってぼくはきみと同じ眼をもってるわけではないし今すぐきみになることなんてできないしぼくは永遠にきみから見えている風景を目にすることができないからすべてではないってどんなに言ってもぼくに見えているも

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【詩】背中

大きな背中
わたしよりもずっとずっと大きかった背中が次第に遠ざかっていく
その事実が確かであることを知らしめるように、ゆっくりとゆっくりと遠ざかっていく
精一杯走ればきっと追いつける
でも、走って追いついてもきっと、意味なんてないのだと分かっていた
必死に走って追いついて
そしてその立派な背中に縋りつくわたしを
あなたはいつもの優しい表情でなだめるのだろう
そうなんだって分かっていた
分かっていた

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【詩】夜

夜、水面に映る誘蛾灯が綺麗でした

藻や苔で濁った汚い水でさえ闇に覆われて、すべてが透き通って煌めいているよう

夜がずっと続けばいいのにとわたしは思った

人々は光ばかり求めて朝を待ち望んでいるけれども、多くのものは光に照らされ、解像度が上がった瞬間に、とてつもなく気味の悪いものになっていくから

見え過ぎたものに絶望するばかりだから

すべてを覆い隠してくれるような夜が好きです

心はすぐに何

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【詩】恋

遠くからわたしは飽きもせずあなたを見つめていて、そのままただ見ているだけでもよかったはずなのだけれど、わたしに気が付いたあなたは自然にわたしに向かって微笑んできて、わたし、真面に目を合わせることもできないまま下を向いた。心音が次第に大きくなっていって、あなたを取り巻くすべての光景が綺麗に見えて、わたしは更にあなたから目が離せなくなって、あなたのことばかりが目に浮かんで、けれども、けれども見ていた人

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【詩】前髪

長い前髪にあなたの手が触れてわたし
遮られていた視界が一気に光を持ち始める
開けた視界、その中心にあるべくしてあるかのようにあなたは佇んでいて
わたしのことを覗き込んでいた
綺麗な目してるねって
宝石みたいだねって微笑んだ
慣れないことにきっと自分でも想像がつかないくらいに目は泳いでいて
それでも、どうしようもないくらいに嬉しかった
あなたの綺麗な瞳が常になにかを捉えているのと同じように
わたしの

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【詩】幽霊

目に見えるものがすべてではないのだと偉そうに言ってる大人が、後で幽霊は信じないんだと言い放っているのを見ながら、わたし、そのひとのことをどうしようもないくらい馬鹿にした

誰にでも分かるような矛盾をわざわざ持ち出してきては、それが鋭い剣であるかのように振りかざして、頭の中でそのひとをぐさぐさ刺しては気持ちよくなって、わたしは、わたしは。でもわたしにはそんな生き方しかできないのです

幽霊?知らんよ

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【詩】雪

肌寒い朝にカーテンを開けると雪が降っていて、わたしたち、雪が綺麗だねとお互い口にする
そうしてわたしたちはそれからもずっと雪の話をしていて、雪がどんなふうに綺麗なのかについて数多の言葉を尽くしていた。一枚の窓ガラスで隔てられた室内から、意味もなく、思いついた形容詞を並べ立てるように、冷えた空気をむやみやたらに振動させたいかのように
わたしたちの口にした言葉はひとりでに宙に浮かびあがっていた
そして

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【詩】線

平等であってほしいと言いながら、みんなと違う服を着たがるのはなぜ?
平等であってほしいと言いながら、テストで他の人よりもいい点を取りたいと思うのはなぜ?
平等であってほしいと言いながら、誰かと自分は違うのだと思いたいのはなぜ?
平等であってほしいと言いながら、いろいろなものを定義したがるのはなぜ?
平等であってほしいと言いながら、何かと何かの違いを思わず言いたくなるのはなぜ?
それで、自分が他人よ

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【詩】言葉

何のために口がついてるんだと誰かに声を荒げて怒鳴られてわたし

口も鼻も耳も目もそれ以外の体の部分もすべては遺伝子情報の組み合わせなんだよと思いつつそれをひた隠す

物事の大抵には理由なんてないし、だからわたしに口がついていることにももちろん理由なんてないんだよ

言わなきゃ分からないだろって

言っても分からないものは分からないし

それに

誰が分かってほしいなんて言った?

誰が分かりたいな

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【詩】教室

なにも言わなくてもわたしたち、分かり合えればいいのに

それはテレパシーだとかそういう表面的なものじゃなくて

お互いの心臓と心臓が繋がりあっているみたいなそういうこと

いや本当はわたしたちじゃなくて、わたしとあなただけの物語

白く淡い月光の下で佇んでる夜の教室にわたしとあなた

なにも見えていなくても、なにも聞こえていなくても、

お互いの温度を肌で感じて

なにも口にせずともわたしたち

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【詩】綺麗なもの

何かを得るために何かをするのだとか、こんな意味があるからこうするのだとか、そんな気持ちの延長線上にあるみたいに普通に、わたしはついには桜が綺麗なものだから見ているということに自分で気が付いて嫌気がさし、わたしは意味のないものに価値を見出し始める

打算的な感情から逃げ出したくて、なんの意味がなくともただそれを眺めていたあのときのような気持ちをどうしても取り戻したくて、わたしは夢中になって意味のない

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