【詩】幽霊

目に見えるものがすべてではないのだと偉そうに言ってる大人が、後で幽霊は信じないんだと言い放っているのを見ながら、わたし、そのひとのことをどうしようもないくらい馬鹿にした

誰にでも分かるような矛盾をわざわざ持ち出してきては、それが鋭い剣であるかのように振りかざして、頭の中でそのひとをぐさぐさ刺しては気持ちよくなって、わたしは、わたしは。でもわたしにはそんな生き方しかできないのです

幽霊?知らんよ、いるんじゃないの?どこかには。だって見たことがあるって人がいるんだもん、いつも見えていてそれで共存してるひとが世界にはたくさんいるんだもん

怖い、怖いよ。

見えているものがすべてな世界

生きている人それぞれに別々の世界が開けていて、そんなことが許される世界

そういう世界がわたしの理想郷でした

ああ、実体も匂いもなにもかもなくなって透明に

それで最後には透明だと認識されることすらもなくなって、わたしがわたしであることもきれいに忘れられたらいいのに

そんなことを思い描いていたのだけれど、わたしはひとつの事実に思い当たる

幽霊がいるのだ

ああ、この世界は地獄です

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