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もう大丈夫だから

おかえり。ずっと待っていたよ。もう、大丈夫だから。
                        –羊文学 「マヨイガ」から−

”大丈夫”
何より大切で、好きな言葉。
いちばん尊敬して、いちばん好きだった人に
この言葉をいちばん辛かった日にもらった時から
大丈夫の効力を肌で感じている。

私はずっと、大丈夫じゃなかった。
小さい時から”不器用”、
”何をやらせてもだめ”、”打たれ弱い”と
よく周りの人たちに言われていた。
全部間違いじゃない。3つとももれなく正解。
運動も、勉強も、ゲームなんかの遊びも、
人間関係も全て大丈夫ではなかった。

誰が見ても自信のない人で、
年を重ねていくごとに腰の曲がり具合は悪化していった。

何をやろうとしても、
数分後のできなかった自分が目の前に立っている。
そしてそれを、周りは悪気なんてなく、笑う。
できない自分を笑うのは普通だから、
私も同じくらい、笑う。
笑えば笑うほど、自信はすり減るのに。

そういう無意識な自信のなさから
私であることはダメだと勝手に認識して
私(仮)で接するため人間関係もままならない。
周りを意識しすぎた私であろうとすればするほど、
評価されに行こうとすればするほど、
嫌われないようにすればするほど
拗れて、絡まって、グシャった。

みんなみたいになれない自分であることを、
極端に怖がった。

その結果、体のどこかしらに力が入っていて
吸う息も吐く息も緊張し
目の奥は静かに濁っていった。

やっとそれに気づいたのは大学生になってから。
密かに溜まっていた本当の自分の声が
苦しみ、悲しみとして憧れていた人と電話をし、
「もしもし、大丈夫?」の一言でパーンっと弾けた。

”何をやっても大丈夫じゃない自分”ではなくて、
ずっと我慢して溜めてきた言葉に埋もれる自分と
地面につきそうな程に曲がった腰、
これでもかというほど低い視線である
自分の姿が大丈夫じゃないと気づけた。

長らく話した後、電話を切る前には
「あなたは大丈夫」「大丈夫だよ」
と伝えてくれた。多くを語るわけでも、
強いアドバイスを言うわけでもない。
シンプルな一言。
でもその言葉の裏にある強さがとんでもない。
この時から恋愛混じったいちばん好きな人から、
人として特別尊敬できる人になった。

初めて、もう大丈夫なのか、といや本当は
ずっとこのままで大丈夫だったんだって
思えた時には胸を張り、視界が開き、
たっぷり息が吸えていた。

大丈夫。
その時から不思議な事に色んな人から
温かい大丈夫をもらえる様になった。
何が大丈夫になったのか、何が変わったのか
正直わからなかったけれど
確かなのは、私が私を大丈夫だと
どこかで信じられるようになっていたって事。

”ジシンノナサさん”や”ネガティブさん”は
全く消える事はなく、
今でも時々仲良くさせてもらっていますが
その人達が悪さをしようともなれば

いちばん私を見てくれて、
わかろうとしてくれて、
嬉しいことを私よりも嬉しそうにしてくれて
悲しかったことを私よりも痛そうにしてくれる
音楽も、好きなものも、嫌いなものも
全部そっくりな救世主のような親友が
”大丈夫”だと信じてくれて
”大丈夫”だと強く伝えてくれます。

過去の自分に伝えてやりたい。
もう、大丈夫。ずっと大丈夫だよ。
今では、自分へも大切な誰かへも大丈夫だよと
伝えることができているのさ。って。

おかえり。ずっと待っていたよ。
もう大丈夫だから
          羊文学 「マヨイガ」から 

あなたへ。
ダイジョウブさんは
隠れてるけどいつも側で待ってる。










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