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H a p p a n o U p d a t e s - No.263

6月の葉っぱの坑夫の更新情報です。
・【新世代作家が描く小説のいま】From Africa!!!
 短編小説(第2回)
・最近思ったこと、考えたこと

Title photo by Rod Waddington(エチオピアの女性のヘアスタイル)CC BY-SA 2.0

□【新世代作家が描く小説のいま】From Africa!!!
アフリカ短編小説集 もくじ  巻頭エッセイ(ニイ・パークス)

2. 織る:Weaving イヴォンヌ・クシーマ(ウガンダ)
正直いうと、この小説を訳しはじめた最初の数分間、いらだち&うんざり感に襲われました。ティーンエイジャーの女の子の、いつ果てるとも知れないタランタランとした、ときに意味不明の、そして脈絡なくあっちへこっちへと飛びまくるひとりごとの乱打。

が、途中からこんな面白い翻訳作業はあるか、というくらい夢中になりました。この子、なんだか面白い。わかるよ、その気持ち。そう思ったときには、言葉を紡ぎながら、自分自身が主人公のティーンエイジャーになっていました。

イヴォンヌはこう言っています。「わたしはweaver、織ることがわたしの仕事だと思っている。そこにある糸をつなぎ、言葉をつなぎ、文章を作り、段落を作り、物語を完成させる」 そして「この物語は、主人公の女の子と作家の私が一緒に創作しているのです」「だから私は彼女の声を"聞く"ことに集中しました」とも。

イヴォンヌとは何度かメール交換をして、この作品について、ウガンダの言語事情のこと(日常的に英語が多く使われていて、そこに地元のルガンダ語を混ぜるなど。ルガンダ語はウガンダの一民族であるバガンダの言葉)、テキストの中の不明な箇所について教えてもらいました。
この作品に出てくるいくつかの現地語は、訳さずそのまま書いています。意味のあるものもありますが、多くは感嘆詞だったりもするので、響きを感じてもらうことを優先しました。
例)何度か出てくる<オバ>は「どちらか」「あるいは」を意味することもあるそうですが、「不思議に思う」という意味、あるいはその強調に使われるようです。

*記事トップのタイトル写真は、アフリカの女性の髪型の例です。『織る』では姉のジェシカのブレイズのことが出てきます。アフリカ人は男女ともに、髪質の問題もあって自分の髪をどう処理し扱うかが、とても重要なようです。と同時に、その苦労の結果が個性の発露となり、ときに一種のアートにまで高められているのが面白く、素晴らしい。

□ 最近思ったこと、考えたこと(happano journal)
06.06/24 英語 → 日本語で起きる様々な不具合。英文はなぜ、あんなに段落が長いのか?!
06.20/24 日本の小説が英語小説になるとき 『穴』『工場』

この二つの記事はある意味、繋がりの中で生まれたものです。最初の記事は英文の段落はなぜ長いのか、日本語の文はなぜ段落が短めなのか、さらに日本語訳する際に訳者は原文にない改行をしてもいいのか、ということに疑問をもったことから書いたものです。そして一つの結論めいたものが出たのですが、その最終段階で、日本の小説にも段落がかなり長いものがあることを発見。

それは小山田浩子さんの『穴』であり『工場』でした。この2冊は英語版がアメリカで出版されていて、それについての論評もジャーナル誌、ウィキペディア英語版などいろいろあることに気づきました。その解釈が、日本の書評とはかなり違っていて興味をもちました。わたし自身、『穴』はすでに読んでいましたが、英語による批評はその印象とも著しく違っていました。
あらためて日本語と英語の間に横たわる、世界の受容の仕方の違いを感じています。


Web Press 葉っぱの坑夫/エディター大黒和恵/editor@happano.org


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