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【久しぶりの空の下】
膝が90度に曲がるようになると、車椅子に乗る練習に入った。
車椅子は、介護用でリクライニングに肘掛けの高さ調節機能、ステップの調節機能など、あらゆるところが調節可能だった。
ベッドから車椅子に移乗するのは大変だった。
慣れるまでは黒川君ともう1人助っ人を呼んで2人がかりで乗せてもらった。
乗せてもらう時に、黒川君の肩に顔が付くと肩越しが白く粉上に汚れた。
これは、僕の顔の皮膚皮なのか?それとも垢なのか?
きっと、両方なのだろう。
とても申し訳なく思った。
自分が逆の立場だったら良い気分ではないからだ。
黒川君は「気にしなくて大丈夫ですよ。」と言う。
でも気になった。
黒川君は、ジムで鍛えるのが趣味でムキムキだった。
半端ないパワーの持ち主だった。あと滅茶苦茶食うらしい。ご飯を食べる話が多かった。
早く娑婆に出て美味いものが食べたいと思った。
車椅子に乗せてもらうと、久しぶりに乗ったせいか少しクラクラした。
黒川君に「体調どうですか?」と聞かれたが「大丈夫」と虚勢を張った。
大丈夫だと自分に言い聞かせたかったのだ。
車椅子を押してもらい病棟を周回した。
初めてナースステーションの前を通ると廊下にラップトップが付いたカートが廊下に並び、そこでナース達が記録を書いていた。
僕に気づいたナースは、「車椅子に乗れて良かったね~」と言った。
「廊下で記録ですか?」と聞くと「ナースステーションは、狭いからねー」と笑っていた。
働いている環境も良くないなと感じた。
黒川君は、「病棟回るのも飽きたでしょう。屋上行ってみますか?」と言われ行くことにした。
屋上に出ると、久しぶりに日差しを浴びたせいか眩しかった。
空は青く澄んでいた。
ずいぶん涼しくなってきたと感じた。
季節は秋の匂いがした。
正面を見ると焼肉どんどんが見えた。
あ~秋の匂いの正体は・・・
焼肉が恋しい。
つづく
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