見出し画像

07. 事業を通じて未来の生活を実現する博報堂のチーム「ミライの事業室」

HANMO
HANMOはサステナブルな循環経済を実現するために生まれたTシャツです。服をつくるときに、どうしてもできてしまう端切れ。この端切れから糸を紡ぎ、生地をつくるのが 【反毛 はんもう】です。反毛の糸は不均一さを持つ独特の風合い。製造ロットごとに少しずつ表情も変わります。 反毛を使うことで、ふんわりとした着心地のTシャツができました。           https://hanmowear.jp/


博報堂という会社は、旬の俳優をキャスティングしてテレビのコマーシャルを撮影したり、清涼飲料のポスターでおなじみのフレーズを作り出すだけじゃないらしい、と気づいたのはここ2−3年のこと。そして1年前に白水さんに「HANMOは博報堂と組んでやります。」と聞いたときに、「え?なんで?綾瀬はるか?(最後は意味不明)」と思った自分がいた。しかし博報堂は、前回岩嵜さん、飯沼さん、波戸さんからちょろっとご紹介があった通りで、何も広告の仕事だけではなく、コンサルティング部隊もあれば、University of Creativityのような未来の創造性を拡張していくコミュニティがあったりする。今回サイセーズと組んでいる「ミライの事業室」は、新規事業を通じてミライの新しい生活を創るというミッションを掲げ、2019年に発足した部署である。

画像1

そのミライの事業室には5つの重点テーマがあり、そのうちの一つである「コマース」を、今回のHANMOプロジェクトチームのメンバーである岩嵜さんと飯沼さんが担当。世界でごみの廃棄問題が問われている今日において、大量生産・消費モデルの商品の開発よりも、作り手の思いが伝わる形で生産される商品の可能性を探ることが未来の事業に繋がる。

飯沼さんは、2011年より自身が手がける個人や小規模のものづくりECサイト”iichi”での経験値から、購入者の変化を実感している。最近では『誰が何をどう作っているか』というものづくりの源流部分に人が興味を持ち始めているそうだ。実際にiichiのサイトでは作家のページにプロフィールの他に展示会情報や購入者からのコメントが掲載されており、商品販売だけれなく、ファン作りを行える施策が行われている。価格差を越えて人が求めているものとは、こういった双方の感情の伴うやりとりや、この作家さんが作った、というのがわかる安心感や透明性なのだろう。

画像2

物が生まれる背景を省みず、作るだけ作って売れれば良しとするこれまでの資本主義経済ではなく、ものづくりの源流に人の意識や興味を近づけていくことで新たな市場が生み出していくことが、ミライの事業室で岩嵜さんと飯沼さんがHANMOを通して見据えようとしている未来のコマースのあり方である。

地域商社として、地域のすでにある物に目を向け、プロダクトアウトしてきた白水さんは資本の捉え方についてもこんなふうに言っている。「今ある物で僕らは基本的に満たされているし、今の地域の資源を見つめなおしたら世の中は回るはず。そんな中、新たに作る必要があるかなあって。『今ある物を見つめなおすことを資本と見出すことが出来るかどうか』っていう視点が大事だと思うんだよね。自分たちのような活動を増やしたいし、それを概念化・仕組化して他にも還元したい。」

それを進めていく上での役割も重要であり、HANMOにおいては明確だ。「一度自分達でやってきたことを変換しなければと思っているし、それが出来るのが博報堂だと思う。僕らの役割は実態を動かしていくこと。」と白水さんは語る。
HANMOが無限に再生を繰り返す綿の反毛では、概念を通してHANMOのTシャツのように今あるものを資源として捉える人を増やしていきたい。それには、白水さん曰く「波戸さんのような人が入ることで、サイセーズだけでは難しい生活者に寄り添った魅力的な発信を行なっていくことができる。」物を作り販売する者、その想いを理解し変換する者、それを人に伝える者。全員が存在して初めて今回のHANMOプロジェクトが成り立つ。

博報堂ミライの事業室のコンセプトは「チーム企業型事業創造」。何だか漢字が多いけれど、要は博報堂が自身の利益のためだけに動くのではなくチームで新しいビジネスを作ろう、というものだ。今回のHANMOプロジェクトにも、生産から広告、販売、そして再生に至るまでに様々なステークホルダーを置くことによって、他者と関り拡張し、さらにこの先の未来の商品開発に対するアイデアとして派生させていく。普通であれば関わらないメンバーの一人ひとりが、HANMOを通して作り上げたいものを自分ごと化し全員で進んでいる。その取り組み自体が新しい価値である。

画像3

博報堂だけではない。サイセーズの渡辺さん、うなぎの寝床の白水さんのHANMOに対する気持ちも共通している。「サイセーズの中で終わらせたくない。在庫とかリスクは抱えても良いから、機会や場は抱え込まずに色々な人に関わってもらうことが大事だと思う。鳥越で、反毛に使うための裁断ワークショップなんかやってみたら良いかなぁとか。」製造者を巻き込むだけでなく、消費者を作る側に巻き込むことすらもう描いている白水さん。そもそも、こうなったら製造者と消費者という境目がなくなる日も遠くないのかもしれない。想像がつかないこれからの展開に注目してほしい。



バックナンバー

01. 綿100%で生産と再生を繰り返すTシャツ「HANMO」

02. 「着る」という行為からその意思を拡張するHANMO

03. 着ながらも次の循環を意識しつづける服

04.(突然ですが)yohakuの渡辺さんって信頼できる

05. そしてサイセーズが始まった




HANMOについて
HANMOは、循環する服作りをテーマに集まったサイセーズ株式会社と株式会社博報堂ミライの事業室の共同プロジェクトです。これまで服作りやブランドづくり、ECなどに関わってきたメンバーが集まって、それぞれの得意領域を持ち寄りながら、新しい循環経済の仕組みづくりを目指しています。                        
このnoteをかいたひと                        大山貴子(おおやま たかこ)
株式会社fog代表取締役。米ボストンサフォーク大にて中南米でのゲリラ農村留学やウガンダの人道支援&平和構築に従事、卒業。ニューヨークにて新聞社、EdTechでの海外戦略、編集&ライティング業を経て、2014年に帰国。日本における食の安全や環境面での取組 みの必要性を感じ、100BANCH入居プロジェクトとしてフードウェイストを考える各種企画やワークショップ開発を実施後、株式会社fogを創設。循環型社会の実現をテーマにしたプロセス設計を食や行動分析、コレクティブインパクトを起こすコミュニティ形成などから行う。https://note.com/octopuseatskale            株式会社fog                            “循環”が社会のエコシステムとして機能する社会を創造するデザインファーム。企業や自治体、コミュニティや消費者など、様々なセクターと手を組み、人を含む生物と地球にとって持続可能な環境を構築するプロセスをデザインしている。                     https://fog.co.jp/

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?