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05. そしてサイセーズが始まった

HANMO
HANMOはサステナブルな循環経済を実現するために生まれたTシャツです。服をつくるときに、どうしてもできてしまう端切れ。この端切れから糸を紡ぎ、生地をつくるのが 【反毛 はんもう】です。反毛の糸は不均一さを持つ独特の風合い。製造ロットごとに少しずつ表情も変わります。 反毛を使うことで、ふんわりとした着心地のTシャツができました。           https://hanmowear.jp/


HANMOを運営するのがサイセーズ株式会社である。
そしてその共同代表が渡辺さんと白水さんである。
2人はそれぞれyohakuとうなぎの寝床の代表でもある。
サイセーズはどうして生まれたのか?という問いかけに白水さんは「渡辺さんの活動や思想をどう社会的にできるのか」と話す。白水さんが閃いたときの行動力と思考の整理力はすごい。だいたい図式で表す。渡辺さんの話を聴きながらきっと白水さんの頭の中はいろんな図式がぐるぐると作られていたことでしょう。


出会いのきっかけは雑誌の企画。その時の担当者は偉大である

そんな2人が出会ったのは、今は廃刊になってしまった着心地のよいナチュラルな服を紹介する季刊誌「nuComfie」。2015年に、yohakuうなぎの寝床が一緒にものを作るという企画があったそう。そこが2人の出会いのきっかけであった。「それまでお互い全く知らなかったんだけど、そういう企画だったんだよね」と2人は回顧する。この企画がなければ、サイセーズもHANMOも生まれることがなかったかもしれないと思うと、この企画の担当者の引き合い力に対して表彰したいくらいである。はじめは無言だった2人も、テキスタイルに関しては異常なほどの知識量をもっているため、現場を出た途端、お互いにタガが外れたかのように話し始めたことから信頼関係を構築しはじめる。企画が終わった後も、技術的なことを中心にコミュニケーションを取るようになっていった。それからというもの、白水さんが東京に行くと必ず渡辺氏のところに行き、マニアックな内容で6、7時間話すということを繰り返していたらしい。何かを作る訳ではないのにも関わらず、というのだから驚きだ。技術や素材についてのこだわりが人一倍強いことが見て取れるエピソードである。


特別じゃなく再生シリーズをやってる渡辺さんを特別だと思った白水さん

yohakuで淡々と残反を利用した服作りを行なっていた渡辺さんの話を聴きながら、白水さんはその取り組みに可能性と面白さを感じた。残反という普通は生産者がゴミとみなして何も考えずに捨てているものを資源だという意識で服作りを行なっているyohakuの取り組みを白水さんはこれまで聞いたことがなかった。しかし、どんなに頑張って減らそうとしても、うなぎの寝床でももんぺを作る過程でどうしても残反が出てしまうし、流通や生地的な問題、そして工場の歪みも見えていたので、残反で服をつくるだけでは、根本的な解決には繋がらないとも思っていたそうだ。だからこそもっと世間に開いて、社会的にやったら良いのではないかと、白水さんのディレクター魂が燃えていた。渡辺さんには伝えていたようだ。実際に、白水さんのところでも残反が出たり、商流・生地的な問題や工場の歪みも見えており、渡辺さんに相談していくようになった。ノウハウを持つ渡辺さんを技術的にも頼りにする白水さんと、自分の取り組みの特別さに気付かず進めていく渡辺さん。改めて、二人が出会ってくれてよかったと何だかほっとしたような気持にすらなる。そうして白水さんによる、社会的なメッセージも込めたコミュニケーションプロジェクトが始まっていった。


反毛技術との出会い、そしてHANMOプロジェクトがスタート

そもそも渡辺氏が反毛技術と出会ったのは、yohakuの運営会社である株式会社サンカーベがOEM事業を行なっていた時のこと。あるアパレル企業が残反を集めていたため、どこに送るのか聞いたところ反毛のためだと聞いたのがきっかけだ。その後気になってしょうがなかった渡辺さんは、自ら反毛組合に問い合わせ実際に見に行くと、当時の組合の会長は渡辺さんの行動力を買ってくれた。「最近の若い人は、服がどこから生まれてどこへ行くのかに興味がない。君みたいに来たことない。本当は量が必要なんだけど特別に少量でも作ってあげるよ。」とありがたいお言葉をいただく。しかしアパレルブランドに声掛けするも、反毛技術によって再生し続ける服なんて、収益化が見込めないからと協力してくれるところはなかった。反毛組合で行なっている反毛は綿ではなく合成の反毛ということもあり、結局当時はそれで諦めたのだった。

それから時間がたち、ずっと頭の片隅にあった反毛ができそうな紡績の会社がみつかったと白水さんから連絡が入る。様々な企業との打ち合わせを繰り返し、渡辺さん念願の綿100%の反毛を大正紡績さんが引き受けてくれることになり、HANMOプロジェクトがスタートした。


バックナンバー

01. 綿100%で生産と再生を繰り返すTシャツ「HANMO」

02. 「着る」という行為からその意思を拡張するHANMO

03. 着ながらも次の循環を意識しつづける服


HANMOについて
HANMOは、循環する服作りをテーマに集まったサイセーズ株式会社と株式会社博報堂ミライの事業室の共同プロジェクトです。これまで服作りやブランドづくり、ECなどに関わってきたメンバーが集まって、それぞれの得意領域を持ち寄りながら、新しい循環経済の仕組みづくりを目指しています。                        
このnoteをかいたひと                        大山貴子(おおやま たかこ)
株式会社fog代表取締役。米ボストンサフォーク大にて中南米でのゲリラ農村留学やウガンダの人道支援&平和構築に従事、卒業。ニューヨークにて新聞社、EdTechでの海外戦略、編集&ライティング業を経て、2014年に帰国。日本における食の安全や環境面での取組 みの必要性を感じ、100BANCH入居プロジェクトとしてフードウェイストを考える各種企画やワークショップ開発を実施後、株式会社fogを創設。循環型社会の実現をテーマにしたプロセス設計を食や行動分析、コレクティブインパクトを起こすコミュニティ形成などから行う。https://note.com/octopuseatskale                                                     株式会社fog                             “循環”が社会のエコシステムとして機能する社会を創造するデザインファーム。企業や自治体、コミュニティや消費者など、様々なセクターと手を組み、人を含む生物と地球にとって持続可能な環境を構築するプロセスをデザインしている。                     https://fog.co.jp/

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