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01. 綿100%で生産と再生を繰り返すTシャツ「HANMO」

HANMO
HANMOはサステナブルな循環経済を実現するために生まれたTシャツです。服をつくるときに、どうしてもできてしまう端切れ。この端切れから糸を紡ぎ、生地をつくるのが 【反毛 はんもう】です。反毛の糸は不均一さを持つ独特の風合い。製造ロットごとに少しずつ表情も変わります。 反毛を使うことで、ふんわりとした着心地のTシャツができました。           https://hanmowear.jp/


昨今のSDGsへの関心の高まりにより、サステナブルやサーキュラーという言葉をよく耳にすることが多くなった。Addidasが2018年に発表した海洋プラスチックゴミを素材にしたスニーカー「ウルトラブースト」や、百貨店と提携して不要になった服の回収と再生を行う日本環境設計の「BRING」プロジェクトなど、様々なアパレルブランドがこぞってサステナブルラインを立ち上げている。中には、これって本当にサステナブルなのかな?と首を傾げてしまうようなものもあるなか、社会全体でサステナブルという言葉が盛り上がっている。

捨て続けられる限りある資源に対して疑問を持ちつづけたチームによる100%天然素材の循環を目的とした新しいブランドがスタート。それがこのnoteで紹介していくHANMOである。HANMOは反毛という生地などの繊維を反毛機という専門の機械を使い綿に戻す機械のこと。ヨーロッパでは、ウールの反毛が行われていたり、日本でも尾張地方を中心に反毛技術を使った布のリサイクルが昔から行われていた。今はその生産のほとんどが東南アジアに移行した軍手の生産にも反毛は使われていた。

HANMOは、今回綿100%にこだわり、反毛のTシャツを結果的に完成させた。結果的にというのは、ポリエステル棍棒やウールの反毛が工場の主流のなか、綿100%の反毛を受け入れてくれる工場を探すのはとても大変だった、と話す本ブランドを展開するサイセーズ株式会社の共同代表、渡辺さんと白水さんがその理由。ブランド立ち上げに向けた話が始まった1年前からその苦労は聞かされてきた。でも、彼らはあくまで綿100%にこだわった。


HANMOの背景:捨てられる布を再生しつづけてきたyohaku

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なぜ綿100%にこだわるのか?渡辺さんがサイセーズと平行して代表を勤めているアパレルブランド「yohaku」で行ってきた服作りがそのベースにある。

yohakuでは、10年あまり再生という服の生産過程で余った布(残反)を使った「再生」という名前の服のラインを製造・販売してきた渡辺さん。名前からして明らかにサステナブルなのに「そもそもあまり環境のことは思ってなかった。」と、ぼそり。情熱があるのに、現実主義な渡辺さんはyohakuという小さなブランドで残反を使って服を作り続けたところで、地球も社会もかわりゃしないと日々思い続けていた。

しかしながらある日、雑誌の企画で渡辺さんと白水さんが出会ったことで、白水さんがyohakuの話を渡辺さんから聞いた。白水さんは、ちょっとカクカクした瓶底のようなメガネをかけているのだが、なにか閃いたときにはそのメガネの奥にある瞳がきらりとひかる男である。まさに旭○成の「イヒ!」みたいに「にょろっ」とは言わないけど、確実に背後にぴこん!とうなぎスイッチが入る瞬間がある、気がする。それはさておき、この再生シリーズの話を聞いたときにも白水さんは目を輝かせたに違いない。そして「その取組みってめちゃ面白いね!」と渡辺さんに伝えたんじゃないかな。

その白水さんの一言で、渡辺さんは「yohakuという小さい単位で行っても社会はかわらない」から、「小さな範囲でも、人になにかしら影響を与えていて、それ自体に意味があるんだ。」と気づいた。うーん、目の前のことを大切にする渡辺さんらしいなあ。


生産者、購入者、土壌にフェアであり続けるために綿100%でなくてはならない

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そしてHANMOプロジェクトが始まるにあたり、ポリエステルと綿の混紡生地はどうだろうか?などいろんなディスカッションが行われた。多分。あるいは、最初から答えは決まっていたのかもしれない。綿は農作物であり、土に返る自然のものだ。そして綿の生産の殆どを海外に依存している日本において、HANMOをファッション業界の未来を拓くであろう取組みにしていこうと考えたときに渡辺さんは「なるべくフェアでありたい。」と思ったそう。

生産者、購入者、土壌、そういったものにフェアであるためには、綿100%でなくてはいけない。来る場所と還る場所が明確なもの。綿100%であることでトレーサビリティが取れる。HANMOは、無限に循環し続けても、原材料である綿は永遠に100%なままである。もし、これがポリエステルの混紡だったならばどうだろう?循環すればするほど、綿とポリエステルの配合のパーセンテージにばらつきがでる。また洗うことで化学化繊は排水溝を通して川にながれ、海を汚す。

一度気を許してトレーサビリティがとれない製品を作ってしまうと、生産過程や出来た製品がどうでも良くなってしまう。それが大量生産・廃棄に繋がってしまい、最後には環境に影響が出てしまう。だからこそHANMOは綿100%、そしてそのなかでもオーガニックのものを選んだ。


そして次の循環を生み出すために細部までこだわり続けたHANMOTシャツ

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綿100%でのHANMOの循環を可能にしていくために、細部にもこだわる。製品表示タグをなくして、直接Tシャツにプリントを施したこともそのひとつ。タグをつけてしまうと、その部分を切り取らなくてはいけなくなるので、Tシャツ全部を反毛にかけることができなくなる。シンプルに、無駄なく仕上げることで、作り手と使い手に問題提起を促す。


HANMOの技術を自分たちだけで独占せず、拡張することで社会を変えるサイセーズ

今日、様々な企業が環境に対する取り組みを行っているが、規模が大きいのでどうしても「環境ビジネス」になってしまう。そうすると合理的な社会システムの渦中で消費される一過性の文明になる。しかしyohakuやサイセーズほどの規模であれば「ビジネスの中に環境が入ってくる」のである。小規模の適量生産を続けていくためには環境も保護しないとね、という意識がベースになっていれば、文化になる。「今回のHANMOもサイセーズとして大規模に展開していこうとは思っていないんですよね。」と白水さん。「HANMOを通して渡辺さんのような人が50人生まれたら、何か社会が変わるかもしれない。」そんな風に思いながら取り組んでいる。自分達でHANMOを拡張していくのではなく、今回の取り組みに影響を受け、模倣する人が増えていくことで文化をつくっている。トレーサビリティを高めることはシンプルだけど、範囲が大きくなればなるほど困難になる可能性もある。だからyohaku、そしてサイセーズがHANMOを発信することが大切なのである。



HANMOについて
HANMOは、循環する服作りをテーマに集まったサイセーズ株式会社と株式会社博報堂ミライの事業室の共同プロジェクトです。これまで服作りやブランドづくり、ECなどに関わってきたメンバーが集まって、それぞれの得意領域を持ち寄りながら、新しい循環経済の仕組みづくりを目指しています。


このnoteをかいたひと                        大山貴子(おおやま たかこ)
株式会社fog代表取締役。米ボストンサフォーク大にて中南米でのゲリラ農村留学やウガンダの人道支援&平和構築に従事、卒業。ニューヨークにて新聞社、EdTechでの海外戦略、編集&ライティング業を経 て、2014年に帰国。日本における食の安全や環境面での取組 みの必要性を感じ、100BANCH入居プロジェクトとしてフードウェイストを考える各種企画やワークショップ開発を実施後、株式会社fogを創設。循環型社会の実現をテーマにしたプ ロセス設計を食や行動分析、コレクティブインパクトを起こすコミュニティ形成などから行う。                https://note.com/octopuseatskale  
                                  株式会社fog                              “循環”が社会のエコシステムとして機能する社会を創造するデザインファーム。企業や自治体、コミュニティや消費者など、様々なセクターと手を組み、人を含む生物と地球にとって持続可能な環境を構築するプロセスをデザインしている。                          https://fog.co.jp/







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