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バップのマインドマップ(1)

メジャーとマイナー
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年代を限定するとシンプルに考えられるかも

ジャズって一言でいっても、さまざまなスタイルがあります。
それらすべてを説明できる統一理論は、どうしても普遍的な反面膨大な理論体系になる。いわゆる「バークリーメソッド」がそれですが、強力なシステムである反面、全貌をつかむことが難しい。

私は1960年代くらいまでの、Be-Bop、Hard-Bop(和製英語だそうですが)を好んで聴き、演奏します。この辺までに限るならジャズもシンプルに考えられる。
特にフロント楽器はその傾向が顕著で、理論の厳密性より「使える音」「使ったらおいしい音」くらいに考えて耳コピを淡々とやってく方がいい。
今回は理論書を読んで「?」「?」を量産している人向け。
鍵は「重力」と「ドミナント・モーション」です。

Bopの人の頭の中

バップ的とは何か。
簡単にいうとドミナント・モーションの「重力」を強く意識した演奏手法です。ツーファイブといいますが IIm7-V7-Iといわれる一揃いのコードセットを多用します。2-5を多用し「転調」の連続とみなしてコード進行を複雑にする。これがバップのやり方です。

言葉で説明するとこんな感じですが、ピンとこないですね。
前回「メジャーとマイナー」で述べましたが、バップでは「ダイアトニック・コード」という調性の統一感よりも、2-5の進行感を大事にします。

Key in C/Amのダイアグラム

Key in C/Amのコードの一揃いを示しています。
このダイアグラムはダイアトニック・コードをバップ向きに配列しなおしているだけです。大事なのは2-5の「重力」。
Vertical(垂直)という表現がありますが、トライトーンを持つコード(G7)は安定した音(C)に解決する方向にむかう。この進行を矢印で示しています。

ダイアグラムには続きがあります。
バップ的にさらに拡張させるとこうなります。

ある調性におけるコードセット

Key in C/Amのダイアグラム ver.2

これが、今回のコラムの核心ですね。

Key in C/Amのコードの一揃いを示しています。
青で囲んだ3つの部分が前回の図に加わりました。

Key in C/Amの曲で頻出するこの一連のコードが、全ての調性で瞬時に想起して吹けるならば、いわゆるバップのソリストの中級者といえるんじゃないかと思う。
(実例は その(2)で示します)
any keyでどんな曲でもサラリと弾いてくれる人は、こういう感じのものが頭の中にできていると思います。

ダイアトニックコードが、その調性の「レギュラー」だとすると、青い3つの囲み部分は「準レギュラー」とでも言えるコードです。

3-6-2-5

何度も繰り返しますが、バップではドミナント・モーションが最も重要です。何度も述べた「2-5」→1 進行の上に、さらに「3-6」Em7-5-A7-9を記入し、5度進行の大きな流れを作ります。

これ。
「このDm7のコード。この部分だけDマイナーってことにさせて!」と考えてます。
「細かいことは聞かないで。私だってこの曲がCだってことは知ってる。それは承知の上なの。でも、何も言わずに、ここだけDマイナーってことにしてほしいの。お母さんが来るからあたしたち付き合ってることにしてくれない?今だけでいいから」みたいな感じです。
そうすると「口裏あわせて!おかあさんにDマイナーってこと納得してもらわないといけないから」となりますわな。
だからDm7の前にDマイナーのツーファイブを置く。Dマイナーのツーファイブを経てDm7がでてくるとDマイナーに聞こえるわけです。

ま、そう考えて、ツーファイブの前にもういっこツーファイブをもってくる。屋上屋(やじょうおく)を重ねるってやつで、ツーファイブの二階建てです。この考え方がいわゆるバップらしさの真髄だと思ってます。
そしてこの3-6-2-5をどう吹くか、ということについて、どこでどのように調性を切り替えるか、ということがバップのポイントであると思っています。

サブドミナントマイナー(SDM)

左の方にFm7-Bb7というコード進行があります。
これも、ジャズあるあるの「エモい」コード進行ですね。
サブドミナントマイナーと言われるコードは、ジャズ・スタンダードのルーツとなる1900〜30年代に流行したミュージカル業界でこのSD(サブドミナント)→SDM(サブドミナントマイナー)の「エモい進行」が大流行したわけで、それが、ジャズ・スタンダードにも取り入れられているわけです。

この 3-6-2-5と サブドミナントマイナーは、モダンジャズのスタイルにおいては準レギュラー的な存在でありまして、ある種ダイアトニック・コード以上に頻度が多いものです。

Ⅵ7

右側のマイナーサイドには、メジャーにおける「3-6-2-5」というコード進行に相当するものはなく、また、サブドミナントマイナーも、そもそもがマイナーではサブドミナントがマイナーなので、SD→SDMという進行はありません。
しかし、マイナーに頻出する準レギュラーコードが一つ。
key in Amであると F7のコード(一応Ⅵ7という言い方にはなる)。
若干ブルーノートっぽい音の響きがあってかっこいいのですが、理論的にいえば、B7の代理コード、F7-E7-Amというセカンダリードミナントコードということになります。
このコード、本当によく出てくるので、準レギュラーとして覚えておくといいでしょう。

センターライン

ドミナント・モーションは、野球の「センターライン」みたいなもんです。

センターライン=「センター、セカンド、ショート、キャッチャー」の一本のラインを重視して9人のポジションのうちの4人を特別扱いするように、ドミナント・モーションでは、すべてのコードの中で、IIm7、V7、Iが最も重要で、その縦の動きを中心にすべてが決まってゆきます。

ポップスや他のコード進行に比べ、バップはこの傾向が顕著です。
調性に留まった調性の統一感(水平=ホリゾンタル)よりも、ドミナント・モーションによる進行(垂直=バーティカル方向の動き)を重視します。

水平方向よりも垂直方向

逆にいうと、ジャズ(バップ)っぽくコード進行にリハモしたければ、この2-5モーションを多用してコードを複雑に割れば、割と簡単にバップっぽさを得ることができます。

続きます。




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