はにわさん@がんばらせてください

りはびりてーしょん。

はにわさん@がんばらせてください

りはびりてーしょん。

最近の記事

旅人、鳥、魔法使い

 茜色の葦原。  藍色の海原。  彼が描く風景に、あの頃の私は恋をした。  それは遥か遠くの国を望むようで。  けれど、何時か遠くの日を懐かしむようで。  なんだか、無性に泣きたくなる風景。  翠色の樹海。  黄金色の雲海。  もしそこに居たら、何が聴こえて、何が香って、何を感じることが出来るのだろうか。  彼の油絵具が歩む旅路に、私はついていきたくてたまらなかった。  その傍らを飛び、肩に止まった一羽の鳥になりたかった。  少しでも近くに。  少しでも遠くへ。  彼が描く風

    • ファントム・アンド・テイク・ファイブ

      「♪立ち止まって少し話でも如何」 街灯の照らす路地。 眠らない街明かりからわざわざ一本離れて、五拍子を刻む男。 傍らには大きなギターケースの口が開き、帽子が逆さに置かれている。 中身は空だった。 「♪忙しい日から離れて話でも如何」 アコースティック・ギターの音は闇夜に溶けるようにくぐもって、口ずさむ声は囁くようだった。 だからだろうか。 「その歌は」 五拍子に割り込む不機嫌な少女の声は、その路地裏ではひどく浮いて響いた。 「嫌味ですか」 「♪日々何とか過ごし切ろうと努めている

      • ザ・レスト・イズ…

        「犯人はこの中にいます。 えへへ、これ言ってみたかったんですよね。どうですか?カッコいいですか? いや、答えなくていいです。そうですよね。このあと犯人を追い詰めるからカッコいいんですよね。分かってますって。 何せボクときたら名探偵なものですから、まあお静かに聞いててくださいよ。 あ、先に言っておきますけど、もしボクが考え込んだりしたら、肩とか叩いてください。悪い癖なんですこれ。 それと、もしボクの名推理でビックリしても大声あげたりしないようにしてくださいね。ほら、犯人を刺激す

        • きよしこの夜

          「ブルー・クリスマスだね」 そう言ったキミは、眉を下げて笑った。 空の癖に空気が読めないなんてどうかしてる。 なんで今日に限って? 雪が降らないだけならいい。 寒いとか、風が強いとか、それならまだいい。 これじゃあせっかくの真新しいブーツが台無しだし、イルミネーションだって見られない。一緒に街を歩いていられればそれだけでも良いのに、まともに歩けやしない。 それに雨の街は暗くて、重くて、とても息苦しい。 間が悪いなぁ、と思った。 いつも雨女だと言って笑ってた、自分のジンクスを呪

          僕らが思うに

          数分経って、彼女がストローから口を放した。 「ぼくが思うにさ」 コーヒー・フラペチーノのカップをテーブルに置いた彼女は、持ち手を机に移してトントンと鳴らす。 話題がひと段落してから彼女が数分の沈黙を持った時は、必ずそのウルフ気味にカットした頭の中で何か考え事をしている。 そしてその後に口を開く時は、唐突にその勘案事を振ってくるのである。彼女の中では話が繋がっているのだ。 僕ははいどうぞ、と先を促した。 「にわか、って何なのさ」 彼女は新しい議題を持ち出すと、反応

          カーテン TRPG プリンター

          「俺は――俺はそいつを取り戻す!」 少年が叫び、男は嘲笑する。 「ハハハ、莫迦らしい。この”精神砕き(スピリット・ブレイカー)”の前でよくほざいた!」 その腕には、がくがく震える少女の姿。 「バカじゃねえ! 返さなきゃ力ずくだっつってんだ!」 「それが莫迦だと言うのだ。彼女は”能力”を持っている。それを活かす事の何が悪いと言うのかね」 不敵な男、その前で拳を握る少年の隣へ、一人の少女が立った。 「”能力”は正しく使われるべき。貴方達悪しき者の手に渡る事は不適切。

          カーテン TRPG プリンター