深夜の独り言
「うん」
わたしは声に出して、ひとり頷いた。
「それがいいと思いますね〜」と続けた。
そしてひとり、にんまりとしている。
*
ひとりの時間。
わたしは部屋で、noteを書いたり、ピアノを弾いたりしていた。
ふだんは同居人がいることも多いので、
夜、ひとりの時間って、ちょっと特別。
いつまで経っても、「作業を始める」ことには勇気がいる。
「あとでいいや」って思っちゃう。
うまく進むこともあるけど、
小さな石にもつまづくと、「またか〜〜〜」とか、「もうやだ〜〜〜」と思う。
*
「だいじょうぶ!!!」
その夜、わたしはひとりの部屋で、声を上げた。
つぶやきよりも大きな、ハッキリとした声だった。
なぜだか、考える前に声が出た。
そして、単純なわたしは「だいじょうぶ」に、なれたような
小さな魔法にかかった。
*
そういえば、あんまり独り言を言わなくなったな、と気づいた。
やっぱり、どれだけこの部屋が「ひとりの空間」であっても
家で「ほんとうにひとり」のときと、そうじゃないときは、ちょっと違うのだと思う。
ドアを隔てたところにいる同居人に、気を遣っている、という感覚はなかったはずなのに。
わたしはいつも、パソコンの前で声にならないような唸りを響かせていた。
*
もっと、「だいじょうぶ」って言ってあげればよかった。
「がんばるぞ」って、口に出してみればよかった。
「それがいいと思いますね〜」なんて、
ばかみたいに口にしたときの安心感を、わたしはこれからも忘れない。
悩んでいたピアノのフレーズが、なんだかしっくりときた夜だった。
そうやってパズルのピースがひとつ、はまると
あれやこれや思い浮かんで、収集がつかなくなったりする。
でも、気に入ったフレーズに「それがいいと思う」って
まるで誰かに後押しされたみたいに、自分の声が、部屋中をまわってわたしに届く。
そうしたら、「それがいい」と、思えてしまう。
*
もっと、声を上げたっていいじゃないか、と思う。
だいじょうぶだって、わたし自身に、言ってあげたっていいじゃないか。
旅立った言葉たちは、どこかに届くことも、そうじゃないこともある。
それでもわたしは、大切な言葉たちを瓶につめて、広い海に投げたい。
毎日、投げたい。
いいんだよ、それで。
投げたあとのことは、あとで考えればいいんだから。
「いいんだよ」、と今晩もわたしは声に出す。
そうしてわたしはこの記事の、投稿ボタンを押すことにした。
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