わたしじゃなくても、世界は回る
いまより冬が、深くなる前の頃。
そろそろだな、と思っていた。
毛布。
出さなくちゃ。
クローゼットを開けて、
圧縮袋から引っ張り出して
外に干して
それだけなのに、なんだかうまくできなかった。
まだ、大丈夫だし。と思っていた。
強がりではなくて、ほんとうに。
冬用のパジャマに替えてから、ずいぶん経つ。
なんとなく、家族の分もパジャマの用意をしたりしていた。
別に、わたしがやらなきゃいけない、ってわけじゃないんだけど。
なんとなく、親切にしてしまう。
わたしはまだ大丈夫。
自分用の、あったかい布団カバーを引っ張り出したから。
ああ、あのひとの分の毛布……
そろそろ干さなくちゃ……
*
ある朝起きたら、毛布が出ていた。
*
その前の夜、わたしは人のタオルケットを勝手に使ってしまっていたらしい。
無意識に泥棒。
「大丈夫だよ、毛布出したから」
*
そうだよなあ。
寒かったら、自分で毛布くらい出すよなあ。
そんなことに、妙に安堵した。
そうだよなあ、わたしがいなくても大丈夫なんだよな。
「ゴミも出しておいたよ」と言われて、
そして、ようやく
「頼むよ」も「助けて」も言えていない自分に、気づいたりしたんだ。
*
時折、「わたしがやらなきゃ」って思い込んでしまう。
助けを求めたりしたら、迷惑になってしまう、と思ってしまう。
わたしには時間があるし、わたしがやったほうが効率がいいよね。とか
いろいろ
そして最初に戻る。わたしがやったほうがいい、は「やらなきゃ」に姿を変えている。
そういうときは、頑張らなくちゃ動けないときで
わたしじゃなくても、世界が回るとき。
*
わたしじゃなくてもいいよ。
あんまり期待もされていないよ。
大切にしてもらうことの恩返しは、頑張ることだけじゃないよ。
だから、
やりたいことをやればいいよ。
やりたいときに、やればいいよ。
世界は今日も、
わたしの勝手な思惑なんか無視して、静かに回っているのだと。
最近は、そんなふうに思っている。
【photo】 amano yasuhiro
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