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スマッシュブラザーズが教えてくれた、「勝ち負け」の世界で生きてゆくこと

「もう、君とは遊ばない…」

唇を噛みながら、そう告げた日を覚えている。
しかしながら、その悔しさは薄れる。
感情って、どうして同じ形を維持できないんだろう。
維持すべきではない、人間の本能だろうか。
遊ばない、なんて言いながら怒っても、時間が経てばまた一緒に遊ぶ。

そうしてある夜、わたしはつぶやいた。

「わたし、強くなりたいんだ…」



Nintendo Switchというゲーム機と暮らして、数年になる。
最初は兄から借りていたのだけれど、おもしろすぎて手放したくなくなってしまって、購入に至った。

兄からは、Switchというゲーム機と一緒に、とあるソフトも渡されていた。
それが、【大乱闘スマッシュブラザーズSP】
スマブラシリーズの最新作だ。
わたしと同年代ならば「64でやった」という人も多いと思う。

わたしはNintendo64世代でありながらも、家ではスマブラを所持しておらず、ほとんどプレイの経験はない。友達の家でちょっと触って、ズタボロに負けるという苦い経験だけ。

「俺、スマブラ強いから」

同居人は言った。
彼は、64のスマブラを相当プレイしていた。

スマッシュブラザーズというこのゲームは、基本的にパーティーゲームだ。
みんなでわいわい楽しむのが本質ではあるけれど、自分が場外に吹っ飛んだら負け。相手を飛ばした数が多く、自分が場外に落ちた回数が少ない者が勝者となる。

スマブラは、なぜかムキになる。

なぜだかみんな、ムキになる。
ムキになる、の意味を調べたら、妙にわたしの心情にぴったりだった。

向きになる
(ちょっとしたことに)本気で腹を立てる。

腹が立つのだ、負けると。妙に。本当に。もう。
Switch割ってやろうかと思う。
勝ってニヤニヤしているアイツの背中に、飛び蹴りしてやろうかと思う。(飛べないけど)

そりゃあ、「もう遊んであげない」くらいは言わせてくれよ。
それくらい、必死になってしまう。虜になる。

同居人は確かに強かった。
でもわたしもおとなだし、Switchのことは割らずに、何度か遊んであげた。

スマッシュブラザーズというのは、パーティーゲームを名乗っているので操作そのものは簡単だ。
全人類、コントローラーを握ってガチャガチャやっていれば、それなりに試合になる。

操作方法はいたってシンプル。

Aボタン(通常攻撃)に、方向キーを組み合わせる
Bボタン(必殺技)に、方向キーを組み合わせる
Aボタンに、方向キーを「弾いて」組み合わせると、スマッシュ攻撃になる

これだけ。
たったこれだけ。
もちろん、方向キーを組み合わせなくても、AボタンとBボタンを押せば、それぞれの技が出る。

ただ、「弾いて方向キーを押す」というスマッシュ攻撃というのがやっかいで、わたしはこれがうまくできなかった。
通常攻撃との差がわからない。
キャラの動きで差があることは理解しているんだけど、打ち分けができない。

強くなりたい。
もう負けたくない。

相手を場外に吹っ飛ばすには、スマッシュを打てるようになるしかない。
スマッシュを打てるようになるには、練習しかない。
単純な答えだった。
わたしは、勝ちたかった。



音楽の世界で生きてきた、というと語弊があるけれど、なんとなく生活の基盤は音楽だった。
「運動音痴というのは君のためにある」と言われたわたしは、屋外の遊びはとことん苦手だった。
スキップも逆上がりも、全然できるようにならなかった。

母親がピアノ教室を開いていて、わたしも幼い頃からピアノを習っていた。
中学では運動ができないので、吹奏楽部に入部。
高校でも吹奏楽部に入ったけど、外部講師の先生が嫌いすぎて、1年経たずに辞めた。わたしは世界を救うために、生徒会長になった。

これまでの話で、お気づきだろうか?
わたしはこれまでの人生で、「勝ち負け」がある世界に、身をおいてこなかった。

もちろん、吹奏楽部でもコンクールはあるし、ピアノも一度だけコンテストに出たことがある。
順位や勝敗は存在する。
でも、音楽ってどこか「みんな違ってみんないい」みたいなフシがある。上手さは武器や礼儀、マナーではあるけれど、「ミスもあるしテンポも乱れちゃってるけど、アツい演奏でめちゃくちゃかっこよかった!!!」みたいなのが、音楽の世界にはある。
白黒ハッキリとした勝敗は、そこにはない。
誰に否定されても、「自分がいちばん格好いい」と最後まで胸を張れたやつが、たぶんいちばん格好いい。


スマッシュブラザーズは、明らかに「勝敗」の世界だった。
撃墜数、落下数に伴い順位が発表される。
発表されるときに、自分が使用していたキャラクターが画面いっぱいに表示されると「勝った」と安堵する。ニヤリと喜ぶ。

不思議と、わたしの友達はみんなそうだ。
もう大人なので、怒鳴ったり喧嘩したりはもちろんしないけど、勝ったら喜ぶし、負けたらめちゃくちゃ悔しそうな顔をしている。わたしは気づいている。わたしもそうだから。

強くなりたい、勝ちたい。

勝負の世界のことはよく知らないけれど、どれだけ強い人だって負けることがあるっていうのが、勝負の世界なんだよね?
負けて悔しくて、でもまた挑戦して、何度も”練習”をする。
練習の過程で、何度も負けてやっぱり悔しい。でも、わたしはコントローラーを握り続けた。
練習をすることで、勝率を上げたり、理想のパフォーマンスの再現率を上げてゆく。
「理想のパフォーマンスの再現率」っていうのは、音楽も同じかな。もっとピアノも練習しよう…



ちなみにスマッシュブラザーズ、最新作のSPは70以上のキャラクターがいる。
ここから好きなキャラを選んで操作をするし、対戦相手も70以上のキャラの中から選ばれる。

「みんな違ってみんな良い」

この言葉は、スマブラのためにある。と、最近のわたしは思っている。
もちろん「強いキャラ」とされているキャラクターは存在するけど、「万能で、使えば絶対に負けないキャラ」というのは存在しない。

スマッシュが強いけど範囲が狭い。とか
攻撃範囲が広いけど、技が出るまでに時間がかかる。とか
脚が速いけどジャンプ力は低い。とか

みんなそれぞれ、個性がある。
キャラの個性を理解しながら、自分の個性と照らし合わせてゆく…
そして選んだキャラで、ひたすら練習をする。


自分の使用キャラにも個性があるように、対戦相手になるキャラクターにも個性がある。
わたしは最近、使用キャラ以外の研修も少しずつ始めている。
こいつはダッシュ攻撃が強いから当たらないようにしなくちゃ、とか
こいつの剣は長くて、段差の下にいても攻撃が当たってしまう、とか。

もうほんとうに果てしない。
使用するキャラについても学びながら、他のキャラについても勉強…研究…

そこまでするか?? そこまでするの!! わたしは勝ちたい。
勝ちたい勝ちたい!
負けたくない!



わたしは最近、スマッシュブラザーズを「練習」して、「研究」している。

同居人にはついに、「俺より強いんじゃない?」と言わせた。
勝負の世界だから、やっぱり負けることもあるので、それは死ぬほど悔しい。また練習に戻る。

弟も最近スマブラで遊んでくれるようになったので、いろいろ知恵を授けてしまったら、ずいぶん強くなってしまった…
よろこばしいことではあるが、おねいちゃんは負けたくない。
君よりずっと幼い心を抱えている。
君が強くなったので、わたしは最近また練習量を増やした。


わたしはいま、勝ち負けの世界に立っている。
今まであまり経験してこなかったこの感情を、言葉にするとどうして安っぽくなってしまうのだろう。

勝つために努力し、
そして努力した分、負けると悔しい。

この感情のすこやかさを、
そして「努力すること」のすこやかさを、噛み締めている。

「スマブラは苦手だから、遊んであげない」と言っていた頃のわたしのことは、ぶっ飛ばしてやりたい。

苦手なら、練習するしかない。
たくさん練習した人に、素人は簡単に勝てないのは当然だ。
最初はへたくそで当然だ。なんだってそうだ。

「スマブラ、うまくなったね」と同居人に褒められるたび、わたしはにんまりする。
「だろぉ?」とニヤニヤしてしまう。

「だって練習したもん」と言い切れるこのすこやかさは、何者にも代え難い。

練習して、強くなる。
勝ちたい。
それでも負ける。
悔しい。
勝ちたい。
だから練習する。

言葉にすれば当たり前みたいな輪廻を、わたしはスマッシュブラザーズに教えてもらった。
これからのわたしも、ひとりのスマブラファイターとして、人間として、成長していきたいと思っている。




(ちなみに)(既にスマブラプレイしている方へ)
持ちキャラは、ベヨネッタ、パルテナ、ベレス
練習してるのは、セフィロス、勇者、カムイ、ゼロスーツサムス、クッパJr.
カービィは初期につかってたので、操作はなんとなくできる…
もっと使えるキャラ増やしたい。

スマブラの生みの親・櫻井さんのことはめちゃくちゃ尊敬してます。
かっこよくないですか?? かっこいいです。
櫻井さんのキャラ紹介動画はめっちゃ見てます。

いつかスマブラ大会とかやりたいな…(いや、ほんとにわたしはまだまだだけど!)
その日まで、牙を研いでおきます。

この記事は「スマブラ全然やったことない人にも読んでもらえるように」と思って、かなりざっくりした情報を書いています。スマブラ好きの方には物足りなかったらすみません…




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