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ささいな散歩

「スーパーに行くけど、何か要るものある?」

同居人は、いつも律儀にそう尋ねてくれる。
だいたい要るものはないのだけれど、今日は「一緒に行く」と答えた。
どうぶつの森も、一段落したところだった。

欲しいものなんて何もなかったけど、生活用品のコーナーも覗くことにした。
ティッシュとか石鹸とか、生活用品の買い出しの担当は、わたしだ。
ふらふら〜っと歩いて、必要なものを探す。
ボディーソープの詰替をしたところなので、新しいものを手に取る。
「トイレットペーパーも買う?」と尋ねられたので、買ってしまうことにした。
あと、アイボン。
ふたりとも花粉がひどいので、これは切らせない。

今日のばんごはんは、お好み焼きらしい。
お好み焼き粉が残り少ないための買い出しだった。
わたしは全然料理をしないので、お肉やお野菜のコーナーはスーッと通り抜けて、謎のおつとめ品コーナーを見て、お弁当とお惣菜のコーナーと、パンのコーナー、スイーツのコーナーを巡回する。
別に、欲しいものは何もなかった。
お醤油が切れかかっていることを思い出したので、それだけ買ってもらうようにお願いした。

スーパーではずっと、うろうろしている。
"鬼滅の刃"の特設コーナーを見て、このアニメが好きな友達の事を思い出した。(わたしも全話見た)
かっぱえびせんは、また新しい味が出ている。

買い物を終えて、ふたりで帰り道を歩く。
帰り道、というほどの距離でもない。わたしたちは、パジャマだってスーパーに行ってしまう。
それでも久し振りの、ふたりの買い物だった。
毎日顔を見ているこの人と出掛けるのはちょっと億劫だけど、散歩は好きだと思う。

「散歩できて、たのしかったよ」
トイレットペーパーを振り回しながら、わたしは言った。

「そうか」と、声に出さずに同居人は笑った。
この人は、ふたりでいると感情がわかりづらい。
怒っているのか考え事をしているのか、あんまり区別がつかなかったりする。
外にいるときは気を使ってしゃべったり笑ったりしているので、リラックスするときは無表情になるそうだ。
その気持ちは、わからないでもない。

それでも、いまとなりで、この男は笑っている。
べつになにもない夜だったけど、少しだけ散歩をして、「たのしかったよ」なんて言ってみたりして
なんだか、よかったな、と思っている。




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