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毎朝のコーヒー

「あ、コーヒーがある」

寝ぼけまなこで、君が言うのが好きだった。


コーヒーをペーパードリップするのは、わたしの役目だ。
5〜6杯用のサーバーに、たっぷり落とす。
サーバーがからになると、またコーヒーを淹れる。

使い終わったドリッパーが洗ってあるし、
さっきお湯を沸かしていたから(大きな音の鳴る、笛吹ケトルを使っている)
コーヒーを淹れたことには、気づいているかもしれない。

そんな、「やはりあるな」という声のときもあるし、
冷蔵庫にコーヒーがあることに、ほんとうに驚いているときもある。
なにも考えていないときもある。
そういうのはだいたい、声でわかるのだけど、どの声も好きだと思う。

「コーヒーはあるのだよ。君のために淹れてやったのだ、いい気分だろう?」と、わたしはにんまりする。
いい気分だな、と思う。
たとえ、わたしが先に飲むために淹れたコーヒーだとしても。


「飲んでいい?」と、律儀に聞かれる。
わたしは、満ち足りた気持ちで「どうぞ」と答える。


コーヒーを淹れる。
君のためにできる、数少ないことのひとつだ。
君の横顔を見て、「今日もいいことをした」と思える。

だからわたしは、
明日も、コーヒーを淹れる。



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