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新しい冒険へ

iPhoneケースを探していた。

永遠を誓った、ケイト・スペードの亀裂に気づいた、その日から。

わたしは、物をあんまり丁寧に扱えない。
丁寧であることに、あんまりチカラを割けない。
そういうふうに、生きている。
それでもいい、と思っている。

だから、壊れてしまったiPhoneケースは危険だった。
これだけ、落としているのだからケースが壊れている。
iPhone本体が壊れてしまったら、たまらない。
だから早めに、新しいケースを、と思っていた。

インターネットでいくつか見繕ったあと、
買い物ついでに、携帯ケースばっかり置いているお店を見たんだけど、満足できるものが見つからなかった。

やっぱりネットで買うしかないかなあ、と思っていたところ
友達の家から帰るついでに見た雑貨屋さんで、インターネットで見繕っていたもの、それそのものを見つけた。
それも、いちばんかわいい、と思っていたやつ。

いちばんかわいいと思っていたやつは、
見ていたものの中で、いちばん「今まで使っていたもの」に似ていた。

せっかく新しくするのに、今までと同じ感じのものでいいのだろうか…?
わたしは、サンプルを何度も手に取り、店内をうろついて考える。


そして、ふと気づく。

どうして、「今までと似ているもの」じゃダメなんだろう。
そうして、「せっかくだから、新しいものに挑戦」しなきゃダメなんだろう。

そんなことはないはずだ。
お洋服だって、かわいいと思ったら似たものをいくつも買う。
でも、財布とか、iPhoneケースは、基本的にひとつだけだから、なんだか慎重な、見当違いの神妙さに包まれていた。

永遠を誓ったケイトスペードとは、おそらく2年ほど一緒にいたはずだ。
2年経っても、こいつがいちばんかわいい、て思ってるんだ。
それってなんだか、すてきなことじゃない?

まったく同じものが欲しい、というわけじゃないけれど
同じようなかわいいやつ、がまだわたしには必要だって、なにも悪くない。
もしかしたらそれは、すてきなことかもしれない。
だって、わたしはもう何年も、花柄を愛している。

そんな、当たり前のことに気づいたら、信じられないくらい心が軽くなった。

狙っていたケースは2色あって、どちらがいいか悩んでいた。
ロイヤルブルーの色が全面についているものもかわいいけど、やっぱり透明がいい。
透明のほうが、いまのわたしにはかわいいと思える。

かわいいと思えるものを、買ったらいい。
わたしはサイズだけ何度も確認して、「この子を連れて帰ろう」と、自信を持って、新しいケースを手に取った。



ケイトスペードのケースも、まだ使えると言ったら使える。
でも、勇気を出して、新しいケースを買ったんだから、とわたしはその日のうちにケースを入れ替えることにした。

永遠を誓ったケイトスペードとの別れは、ちょっと寂しい。

寂しいのは、当たり前だ。
でも、次に行くって決めたんだ。

わたしは、除菌シートとキッチンペーパーを持って、同居人の隣りに座った。
「いまから、ケースを替える儀式を行います」と勝手に言って、わたしはケイトスペードと別れた。

除菌シートとキッチンペーパーで、ていねいにiPhoneを拭く。
そうして、新しいケースを装着する。
うまくできなくて、しどろもどろになってしまったけれど、ようやくケースの入れ替えが終わった。

「うん、かわいい」とわたしは声に出す。

そして、声に出さずに「これからよろしくね」と伝えた。
わたしはこれから、君とどんな旅をするんだろう。
iPhoneってもしかしたら、「物」の中で、いちばんわたしと一緒にいるものかもしれない。
これから出会う人の、第一印象の、その次とか、またその次くらいに見られるものかもしれない。

これが、わたし。

わたしは新しい相棒との旅を、いさましい気持ちで歩み始めたところだ。



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