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ひるまのまどろみ

今日の日中は、ベッドにもぐりこんでいた。

そういうふうに、したほうがいいときもある。
起きていると、いろんなことを考えすぎてしまう。
たぶん、考えすぎなのだ、と下唇のヘルペスが言っている。

唇のヘルペスは決定打のようなものだった。
わたしは右頬の吹き出物も、ヘルペスの裏にとっくにできていた口内炎も気にせずに
“なにか”をずっと考えていた。
「やりすぎだ」と、ヘルペスは言った。

いいわ、じゃあ今日は何もしないわ、とベッドに逃げ込む。
ベッドは、わたしの”なにか”を解決してくれることはないけれど、確かに”なにか”から守ってくれる。

日中は、上の階から掃除機をかける音がした。

上の階、がもたらす音というのは、自分の部屋から出る音とは違った安心感がある。
知らない生活の音。
わたしは、上の階の人の、顔も知らない。
玄関ですれ違ったあの人か、もしかしたらあの人が、上の階の人かもしれないけど、正体はわからない。
誰か、が上の階で掃除機をかけている。

鉄筋コンクリートの建物は、音をよく遮断する。
人の声は、全然聞こえてこない。
それでも、掃除機の音は、ごおおお、とベッドの上で響いている。
もう終わったかな?と思うと、もう一度、ごおおおおと響き渡る。

わたしは、その音に安心しながら、まどろむ。
どうしてだろうなあ、なんだか安心するなあ
ああ、こういう時間がいちばんしあわせなのかもしれない。
理由は、わからないけれど

まあ、いいや。
わたしはなぜだか安心した心を抱えながら、もう一度そっと目を閉じた。




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