【往復書簡】 真実は目に見えない
▼前回の手紙
ドトールに座って、ぼうっとする。
病院の予約まで、あと20分。
書きたいものはたくさんあるけれど、わたしはどうも「ケツの時間が決まっているひとり時間」に弱い。
「結果的に20分あればできることはたくさんある」というのに、「20分しかない」と思うと、なかなか手が動かない。
そうだ。手紙を書こう、と思った。
むかしはよく、カフェで手紙を書いた。
手帳に、ポストカードと切手を挟んで、いつでも投函できるように準備をしていた。あの頃みたいに、うんと身軽な気持ちで書きたい。そして、自分を元気づけるために。
カレンダーの、「今週末に書くこと」の中に、めけへの手紙があって
それを、「月末までに書くこと」に移動させたところだった。
早く書かなきゃいけない、なんていうわけもないのに、なんとなく気持ちが急いてしまう。
そして、誰に頼まれているわけでもないのに「遅くなった言い訳」なんて書いたりしちゃう。
毎週のピアノのレッスンで飽くことなく、「今週何を話したか」を先生に言い訳していた、あのころと何ら変わらない気がする。
今週の言い訳としては、「ポートフォリオに連なることを書いていた」これに尽きる。
誰かと一緒に作る記事。誰かの役に立つと信じた情報(わたしが知れて嬉しかったこと)を編んでゆくのは、想像以上の幸福だった。そしてまた次のご依頼をいただけることも。
noteを毎日書いていると××になったという人は多い。フォロワーや、いいねの桁が違うだとか、何かしらの功績とか。(あるいは、功績など不要なくらいの日々である。”まっとうさ”みたいなものとか)
わたしは、なんていうか中の上くらいで、良かったことはたくさんあるけれど、能動的に「叶えたこと」はひとつもないような1500日だった。
それが今、少しずつ実を結んでいることが、すなおに嬉しい。
まだ、手放しで「続けていくといいよ」なんて、アドバイスはできないけれど。
ただし、「続けなかった人生」のことを思うとゾッとする。という事実を、胸を張って伝えられる。
前回の手紙では「おもしろいこと」なんて言って困らせて悪かった……と、ほんの少しだけ思った。めけのことだから、そんな困った状況も、おもしろがってくれているのだと信じている。
「こういうことは自宅では書かない」と言っていたけれど、これは自宅の在り方にもよるよね。わたしは自宅で、わたしであってそれ以上ではない。自分の部屋をひとりずつ持った大人が暮らしているだけだけれど、
めけは夫であり、父親であり、同居の家族もわたしより多ければ、そりゃあ家の在り方も違うわけで。
そう思うと、ふいに生き方の選択肢というか、やっぱり"在り方"のようなものが、ぐーーーんと広がっておもしろいような気がしている。
わたしの同居人は、なかなか家にいない。日付が変わる前に家にいることが少ない。
何をしているかといえば、職場で"自分事"をしたり、帰り道でビールを飲みながら打ち合わせをしているらしい。
その頻度たるや、「この男は、本当はわたしと暮らしたくないのではないか」と訝しんでしまうほどだけれど、端的にいえば「ひとりの時間」っていうのは、みんなそれぞれ必要なものなのだ。
そう思うと同居人は、家にいるわずかな時間は「家族の時間」と思ってくれているのだと思えば、それもそれで有り難いというか……別に、有り難くはないのだけれど。
ひとりの時間なのに家族を求める矛盾については、あと10,000字語っても足りないなァ。
わたしは、めけが奥さんと結婚した、その理由と流れについてのあの感覚、めっちゃ好きだったけどね。気づいたらいた、っていうやつ。
話は逸れたけれど、近年のわたしはどこでも書く。
本当は、家ではうまく集中できなかったのだけれど、コロナ禍+無職で外に出れなくなってしまったので、家で書けるように矯正した。
あとは、Bluetoothのキーボードがあればどこでも、と思っていたのだけれど、最近はベッドの上でも書く。もちろん、キーボードを叩くよりフリック入力のほうが遅いので、長文は書かないのだけれど。
なんでも良くなる人生っていうのは、悪くないと思う。
かつて、Nord Electroに所定のリバーブとディレイを繋いだ、あの環境でしか弾かなかったわたしを、懐かしいと思う。電源もシールドも全部こだわっていた。
今は、鍵盤楽器で音が鳴ればなんでもいい。
10キロの楽器を背負わなくても良くなったので、どこへでもゆける。
こだわっていたころを否定するわけではないけれど、今は今でいいなあ。などと思う。
書くときのBGMについては、今でもこだわっていると思う。
こだわっているというか、振り回されている。が、正しいと気がついた。
AirPods Proを入手してから、出先での執筆が捗るようになったのは、本当に画期的な出来事だった。どこにいても、きちんと自分の好きな音だけを聞けることは、執筆の大きな後押しとなっている。
今でも、歌詞のあるものを聴きながら書くのは苦手なんだけど、題材によっては歌を聞くことが多い。
なぜか、Vtuberの星街すいせいちゃんと、HACHIの曲は、聴きながらたくさん書けた。スガシカオ聞いたりしてたら、絶対に書けないんだけどなァ……
▼星街すいせい
この曲は、キングダムハーツとかマリオRPGの楽曲を作った下村陽子さんとコラボしていてめっちゃ好き。どちらも中高生時代にリアタイしたゲーム
▼HACHI
むかし一緒に音楽をやっていた相方の歌声に似ていると言われて、ゾッとしたけど、たぶんそうだと思う。
だいたい、書きたいもののBPMに合わせて曲を選ぶ。
▼最近はこのへん
今日も、nakamuraさんの曲聞いてた
▼軽やかな読了感を目指しているときは、
どうしても、腹の底を書きたい。と思うときは、今でもマトリョーシカを聞く。そうしてだいたい、泣きながら書く。
めけは、執筆のときに何を聞いている?
あるいは料理のとき、家事のとき、何を聞いている?
わたしはいつも、音楽に寄り添ってもらっている。
ひとりじゃ立てないときや、頑張れないときに、強い自分へ擬態するための後押しだと思う。
いちばん手軽に、いちばん遠くへ連れて行ってもらう方法というか
結局20分だと、2300文字くらいしか書けなかった……
残りは家で仕上げて公開するつもりだったけれど、読み直してみたらいうほど悪くなくて……わたしは、時間が経つと自分の創作物を許せるほうのタイプ。世の中には、時間が経てば経つほど、よくわからなくなったり、もっとよくなるんじゃないかと思ったり、ぐるぐるしてしまうタイプもいると効くけれど。わたしは脳天気なほうなので、今日も書いていると思う。
病院にはきちんと行くよ。健やかな時間を手に入れて、また手紙を書きたいからね。
▼今までの手紙まとめ
この記事が参加している募集
スタバに行きます。500円以上のサポートで、ご希望の方には郵便でお手紙のお届けも◎