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贈り物(わたしはあなたを、想っています)

先日、友達から荷物が届いた。

宛先を確認してみると、お見舞いを送ってあった友達で
中身は、おしゃれな紅茶だった。

贈り物は、すごくすごくうれしいのに、でも「お礼なんてよかったのに」と思う。
会いに行くこともできず、詳しい状況もわからず、いつもみたいに、手紙の中の友達は笑ってくれているから、まるで何事もなかったような気さえしている。

苦しいことがあった、そののち
時間が経ったら「何事もなかったかのようにに振る舞われること」が、わたしは苦しかった。
まだ苦しみの渦中にいるのに、とわたしは何度も落ち込んでしまった。

やさしい友達は、そんなことは思わないだろう、とわかっていたけれど
わたしは時間をおいて、二度目のお見舞いを送ったところだった。

わたしが送ったのは、近所のスーパーで買ったお気に入りの紅茶と、Amazonのギフト券だった。

彼女は、わたしの家で出す紅茶を、いつも「おいしい」と言ってくれた。
「レディグレイ」という、トワイニングのお茶を出したときは、「美味しかったから家でも買った」と言ってくれていた。

そんな記憶が強く残っていたから、やっぱりお茶を贈ってしまった。
あなたとわたしといえば、紅茶よね、と。
わたしは、そんなふうに思っている。

今回わたしが贈った紅茶も、「家族で取り合いになっている」と言ってくれて、なんだか嬉しかった。
やっぱりわたしたちは、紅茶でつながっているような気がしたし、彼女の家が、なんだか明るい空気をまとっているように感じた。

だから、紅茶が届いて嬉しかった。

明らかに高級そうな紅茶は、また別の友達が遊びに来てくれたときに開封した。
「ぜんぜん渋くない」
「なんか、甘くてとろっとしてる」
「飲みやすい」
「これは、冷めても美味しい」
ふたりで、この紅茶を褒めあって、わたしはすごく満足している。

でもやっぱり、どこかで「お礼なんてよかったのに」と思う。
あのささやかな贈り物は、わたしが「あなたを大切に思っている」ということを伝えたかっただけで
何かを、返してほしいわけじゃなかった。
そんなに、気を使わなくていいのに、
ただあなたは、受け取ってくれれば充分だった。

わたしはこの気持ちを、決して否定しない。

だからね、わかっているよ。

あなたもきっと、「ありがとう」と思って、贈ってくれたんだよね。
手紙にも書いてくれてあったけど、わたしはあなたの、助けになれたんだよね。

それを、あなたも形にしようとして
紅茶好きのわたしに、何か良いものを、と思って、見繕ってくれたんだよね。

その気持ちも、届いているよ。
この紅茶を飲むたびに、あなたを思い出すよ。
わたしも、「ありがとう」って思うよ。
ほんとうに美味しい紅茶だったから、飲みきったら新しいのを買っちゃうかも。
そしてわたしもいつか、紅茶好きの友達に、このお茶をプレゼントするよ。

ありがとう、
離れているのに、わたしをあなたの日常に、まぎれこませてくれて。

贈り物って、「モノ」だけじゃなくて
「あなたと会えないそのときも、あなたを想っています」っていうことだと思う。
贈る人のことを思い出して、好きなものを考えて、
もしできれば、よろこんで欲しくて
そんなことを、たくさん考えて。
そしてそれは、すごくしあわせな時間だと思う。
わたしも、贈るときはいつも、そう感じている。


あなたにできることは少ないかもしれない。
でも、わたしは時間を切り裂いて、手間をかけてでも、伝えたい。
わたしはあなたを、想っています。ただ、それだけを



【photo】 @TripGirrrrl
https://twitter.com/TripGirrrrl







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