走り始めた君へ 〜300日間歩み続けた僕からの手紙
松永さんのおかげで、やりたいこととかやることとか見えました
そんなことをわざわざ、報せてくれてありがとう。
べつに、次に会うときで構わなかったのに。
僕だって君と話せてずいぶん勉強になったから、お互いさまだよ。
でもこの連絡は、僕にとって一番嬉しいことのひとつになった。
それは、断言できる。
だから、ありがとう。
僕は、世界平和を願えない。
手の届かない、見えない人まで救おうとすることはできない。
僕は、薄情かもしれない。
その代わり、手が届く友人たちのことは、漏れなく救いたいと思っている。
悩むなというわけじゃないけれど、必要以上に泣かないで、苦しまないで欲しいと思っている。
僕は、そのために手を尽くす。
僕が、君の救いになれたのならば、それは人生でいちばんの喜びだ。
この手紙は、走り始めた君に宛てることにする。
君がまた、落下するような苦しみに追われる日がきたとき、ひとつの道標になればいいと思って、これを記す。
その苦しみの最中、君がもし「救われたい」と願うならば、この手紙のことを思い出して欲しい。
もうどこへも行きたくないと願うならば、この手紙は読まずにいてくれて構わない。
君が膝を抱える日がきても、僕だけは決して、それを責めない。
君の願いが、明るい太陽の中にあるのかどうか、僕は知らない。
まだ君が、太陽を目指すならば
どうかこの続きを、紐解いて欲しい。
*
まず始めに、ここまでたどり着いたことを、盛大に褒め称えたい。
えらかったね。
よく一歩、踏み出したね。
不安でいっぱいだったでしょう?
でも、やってみれば、君にできないことはでなかったと思う。
少しずつ、君は身軽になってゆく。
人は、良くも悪くも適応する生き物だから。
これは、このあいだ話した通りだね。
新しい仕事を始めるときの君は、不安でいっぱいだったと思う。
でももう、平気な顔で職場を歩いている。
*
人は適応する。
その対価かもしれない。
「同じ感情を、維持できない」と、僕は確信している。
それは、幼い日の記憶が霞んでゆくこともそうだけれど、
ごめんね、僕は少し意地悪なことを言うよ。
君がいま、最初の一歩として掲げた情熱は、絶対に維持されない。
炎のように揺れる。
その炎は、決して”強く燃え続けること”はできない。
それは、どれだけ大きな炎を炊いたって、きっとそうだと思う。
きっと君はこれから、せっかく火を灯した願いが、しぼんでゆく場面に遭遇すると思う。
毎日続けて飽きてしまったり、仕事が忙しくなったり、疲れてしまったり、何かのストレスに押し潰されることもあるし、おそらく他人と比べてしまうときも訪れるはずだ。
大切なことだから、もう一度言う。
人間は、「同じ感情を維持できない」。
君の炎がいまより小さくなるときが来たとしても、それは当然のことだ。
君のせいじゃない。
怠惰だからではない。
そういうもの、としか言いようがない。
慣れは、心躍る感情を少しずつ奪ってゆく。
これは、対価だ。残酷かもしれないけれど
だからどうか、君の炎が弱まったときに、自分を責めすぎないで欲しい。
そういうときは、必ず訪れる。
晴れた日と雨の日があるように、
川の流れが、一定でないように。
*
もう一度強い炎を灯す方法は、いくつかあると思う。
体力が足りていないなら、休むしかない。
逃げ出すことも必要だ。
僕がいま、君に伝えるならば…そうだな。
「弱い炎を受け入れること」かもしれない。
弱くても炎を消さず、少しでも「君の願い」に触れ続けること。
小指の先っぽだって構わない。
君は楽器を弾く人だから、何か音楽…それは、新しいものでも聞き古したものでも、構わない…を聞いてみたり
楽器を撫でてみるだけでも、いいかもしれない。
気が向いたら、あのときみたいに楽器を抱えてみてくれ。
出す音が、美しくないとか、ぜんぜんだめだと思ってしまうかもしれないけど。
もうこれは、「そういう日もある」としか言いようがない。
それでも君は前を向くことで、行動することで確実に、君の願いに近づくはずだ。
あとは、気分転換に散歩したり、掃除をしたり、一日中ゲームをやってみたり、試してくれ。
正解はどこにもない。
もし、正解に近づけなかったとしても、「これは違ったな」と思って、別のものを試せばいい。
君は、一度で正解にたどり着けるほど、よくできた人間ではないはずだ。
僕だってそう。
弱い炎でも、発し続けて。
人目に触れるところに、作品を出すのもいいかもしれない。
誰かが、君を助けて、守ってくれるかもしれない。
僕は、いつでも完璧じゃなくてもいいと思っている。
「好きなことでお金を稼げていない」ということが、少し前の僕を苦しめていたような気がするけど、いまは「完璧じゃなくても許される」自由な、身勝手な立場でいられることも、悪くないと思っている。
他人は、君よりも「君の良し悪し」に興味が無いかもしれない。
世界は思っているよりもやさしく、「走り続けた君」を見守ってくれるだろう。
少なくとも、世界でたったひとり、僕だけはそんな気持ちで君のそばにいる。これからも変わらない。それだけは約束しよう。
*
評価について悩むことも、あると思う。
必ず、数字が増え続けるもの、というものもこの世に存在する。
僕の場合、YouTubeの再生回数がそれにあたるかな。
でも、「前の作品のほうが再生された」という事象は、必ず発生する。
物事は、右肩上がりには進まない。
これも、絶対だ。
大きな評価をもらったあと、次も同じか、それ以上の評価になるとは限らない。
でもそれは、君が劣化したからではない。
いや、劣化したかもしれないけど、それが一体何だって言うんだ。
君の願いを、思い出して欲しい。
僕の願いは「続けること」の中にあるような気がする。
作品や投稿に押されるハートマークの数は、可視化される。
もちろん、数の上下は存在していて、決して右肩上がりではない。
そして、そのひとつのハートが「ひとつの奇跡」であることを僕は忘れない。
こんな僕に出会って、好きだと言ってくれる人がいる。
それって、けっこうな奇跡じゃないか?
僕は絶対に、そのことを忘れない。
大きな評価が、君の足枷になるときも訪れるかもしれない。
でも、忘れないで欲しい、
君の足枷になりたいという理由で、君を評価するような奇特な人は、存在しないということを。
そして僕は”自分が世に出したいと願った作品しか存在していない”と確信している。
もちろん、眠くて「今日は手抜きだな」と思ってしまう日が、ないわけじゃない。
でも、僕はその都度のベストを尽くしている。
そのときいちばん美しい炎を、僕なりのルールや自信を持って発信している。
発信すること自体で、僕の夢は叶っている。
君の夢はどうだい?
*
他人と比べて悩むことも、あると思う。
もう僕らは「イイトシだし」なんて言える30代に突入している。
僕らより輝いている20代は、たくさんいる。
当然だよ。
僕らなんか、ちっぽけな存在だ。
それでいいじゃないか。
もう、20代に戻ることはできない。
僕たちに残されたのは、未来だけだ。
このまま何もせず歳を重ねるのと、
いまのうちに転んだり挑んだりしながら成長するのと、どっちがいい?
それは、君が決めることだ。
他人はあんまり関係ない。
それなのに、強い光で目を焼かれてしまいそうになるけど、ぐっと堪えて欲しい。
僕も、そうしてきた。
正直、何百回と目を焼かれて、もう歩けないと思ってばかりだった。
そんな僕は、君から見て少し眩しいところにいるんだろう?
僕は、今日だって信じられない気持ちだよ。
そして、僕は僕にしかなれないことに気づいた。
もう、そう思うしかなかった。
それが、良いものかどうか、僕はまだ知らないけれど
いつかの未来の僕が、決着をつけてくれればいいなと思っている。
手を動かして、明日悩もう。
ここ最近の僕はそんな感じで、これが結構悪くないんじゃないか、と思っている。
*
同じことを続けることで、不安を感じる日もくるかもしれない。
そう、何度も言うけれど「人は適応する」。
最初は「これだけ頑張っていたのに」ということが、「当たり前」になったあと、君は物足りなさを感じるかもしれない。
そういうときは、最初の一歩を思い出して、思いついたことに挑戦してみるといい。
最初は、うまくいかない。
慣れるまでは大変だ。
評価を得られるかもわからない。
でももう、その過程を乗り越えて、ここまできた君だ。
どうか、踏み出して欲しい。
そして、誰かの手が必要になったときは、迷わず僕のところに来て欲しい。
君を助けたい、と
君のすこやかな日々を願っている人間がいることを、忘れないで欲しい。
*
これは、走り始めた君への手紙であり、
300日前に右も左もわからず、目的地も持たないまま裸足で駆け出した僕への手紙だと思う。
こうやって僕は、歩んできた。
えらそうな先輩面をしてしまって申し訳ないけれど、君がどうか、僕と同じ苦しみの沼に落ちないように。
いや、きっと落ちるのだろうけど、そのときに溺れすぎないように。
これは僕が、君と、過去の僕に投げたロープみたいなものだと思って欲しい。
必要があったら、きちんと捕まってほしい。
*
もしかしたらこの手紙には、「聞きたくなかったこと」や「大きなお節介」がたくさんあるかもしれない。
あいしている、と言えばすべて片付くとは思っていない。
許されるとも思っていない。
でも、我儘で身勝手な僕だから伝える。
君のすこやかな日々を、願っている。
あんまり君が、不必要に泣かなければいいと思っている。
安全な道を行って欲しい、と思っているわけじゃない。
大いに悩み、苦しむときもあるだろう。
でも、忘れないで欲しい。
今日僕が伝えた言葉の、何か、君に刺さるものがあれば。
どうか抱えて、君の行く末が守られることを、本当に願っている。
僕の”経験”と呼べるかわからない代物が、もし君に必要だったら、遠慮なくぜんぶ持っていって欲しい。
そんな気持ちで、この手紙を書いた。
*
まあ、また話そう。
人の手が必要になったら、声をかけて欲しい。
君の苦しみは、僕から見えない。
だから、助けを求めて欲しい。
なんで助けるのかって?
僕がもう、すべてを投げ出そうとしたときに、肩を叩いてくれたのは君だったじゃないか。
あのときの恩を、返しているだけだよ。
だから君は、遠慮なく僕に助けを求めてくれ。
あのとき君がいなかったら、どうせ僕は死んでいたようなものだから。
あれから何年経っても、僕たちはまだ友達だ。まだそばにいる。
不思議な縁だ、としみじみ思う。
せっかくのご縁だし、
まだまだ、君の人生に参加させて欲しい。
*
君のことだから、この手紙は最後まで読んでくれたんじゃないかと思っている。
僕の身勝手な言葉に付き合ってくれてありがとう。
僕はいつでも、いつまでもここで
君の無事を願っている。
2021.0215 まつなが
親愛なる君へ
【photo】 amano yasuhiro
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