マガジンのカバー画像

君に伝えたい百の言葉

389
あなたに伝えたい言葉が残っている。見失っても、百個積んだ先に何かがあるかもしれない。光を追う者のエッセイ集
運営しているクリエイター

2022年2月の記事一覧

ボタンがあるなら押してみたい人生を

ちょっとやってみようかなあ と、思う。 ちょっと、と心がくすりと笑いながら手を伸ばすとき わたしは必ず、ぎゅっと掴む。 ちょっとでいいんだよ。 ぜんぶやらなくていい。 さいしょから、完璧にできるわけもないよ。 だいじょうぶ。 「ちょっと」と言うとき わたしの心は、幼い子供ような無邪気さで笑っている。 それはなんだか、たのしい予感だった。 * 今日は、ちょっと試しに さっき聞いた曲をイメージしてピアノ弾いてみよう、と思った。 曲に散らばる要素の幾千万から、たったひと

さみしさの海を泳いで

3度、横顔を見つめて 2度、ゆっくりと触れたあと 「ありがとう」と別れを告げて、抱きしめた。 別れには、いつまで経っても慣れない。 特に今日は、「他を生かすため」の選択だったから、なおさらのような気がしている。 アニメとか、ゲームとかの、「生贄をひとり捧げるか、国が焼け滅ぶか」みたいな場面を思い出してしまう。 大袈裟すぎなのはわかっているけれど。 * わたしは今日、紫色のラナンキュラスと別れた。 いちばん最初に咲いたそれひとつを、パツンと切って、抱きしめてからゴミ箱に

ものしりなおしゃべり

「お父さんって、ものしりだね」 いろんなことを教えてくれる、お父さん。 わたしの知らないことを、たくさん知っている。 幼いわたしは、そのことが嬉しかった。 嬉しい気持ちのまま、母にそう告げた。 お父さんって、ものしりだね。 「得意なことを話しているだけだよ」 表情を変えずに、母は言った。 そのときのことを、いまでも覚えている。 ああ、なるほど。と思った。 幼いながら、妙に納得した。 そりゃあ、お父さんのほうがものしりに見えるわけだ。 だって、お母さんとのほうが、趣味

午前3時のひとりごと

最近は、言葉について考えている。 そもそも、 わざわざ発信なんてしなくても 書かなくても、生きていけるのに。 不思議だ。 それでも、 それだからか、 ひとはひとりでは、生きていけないと云う。 Dr.STONEという物語は、 全人類が石化し、文明も荒廃した世界でたったひとりの男が目覚めるところから始まる。 最初に目覚めた賢い男は、言葉通りの丸裸から服を作り、住処を作り、食べ物を確保した。 そこまでひとりで生きてきた彼だけど、ひとりで”生き続けること”はできなかった。 彼

書きたくない。を、飲み込んで

書きたくない と、思う夜がある。 * 「そろそろ書こうかな」が、「書かなきゃ」に変化することもある。 「書かなきゃ」が「書けない」に変化することもある。 ふわふわと、吐き出されたばかりの煙草の煙みたいに、わたしの気持ちは漂っている。 細くなって更に舞い上がったり、次の煙と混ざり合ったり、消えてしまったりする。 移ろう、それを”感情”と呼ぶ。 「書きたくない」は、感情ではない。 それは、”意思”だ。 強さがある。 もう動きたくない、と強く思っている。 「書かなきゃ」

泥水号

最近、言葉の勉強をしている。 書き方とか、伝え方、選び方 わたしなりに、吸収しようと試みている。 2ヶ月間の休職中。 病による休職なので、休むのが仕事なのはわかっているのだけれど だってもう、知っているから。 敷かれたレールなんか歩かない、と思っていたのに わたしは、昨日までの自分が敷いたレールの上しか歩けない。 ということを。 * 2020年の4月から12月のあいだを、無職で過ごした。 緊急事態宣言の影響で職を失い、鬱々とした世界を横目に、部屋にこもっていた。 「仕

ドレッシングをかけすぎても、ハイチュウをみっつ食べても。

最近、サラダが美味しい。 前世は、草食動物だったんじゃないか、と思うくらい。 味覚が完全に戻ったわけではないので、「味そのものが」という感覚ではなくて、 葉っぱが身体に染みるなあ、としみじみしてしまう。 * すべてのものから異臭がする、という史上最悪な状態を少し抜け食べられるものが増えてきた。 何が良いかって、ドレッシングを選べるようになった。 それぞれの味の違いがわかる。 シーザーとか、 キャベツ用ドレッシングのなんか酸っぱい?のとか、 焼肉のタレのフルーツっぽい味と

家族、という生き物の難しさについて、わたしは今日も考えている。

「明日の仕事、休みになりました」 起きたら、そんな連絡が入ってきていた。 ねぼけまなこで、もう一度読む。 休み、なるほど。 休みになったのは、わたしではない。 わたしは休職中だから、今日も明日も休み。 休みになったというのは、家族からの報せだ。 明日休み、なるほど。 もう一度頷いて理解する。 メッセージの送信時間と照らし合わせて、今日休みになったのかと理解する。 * 家族が家にいると、わたしの行動はほんの少し異なる。 少しだけ、静かに過ごすようにする。 睡眠の邪魔に

キッチン

「うちに住めばいーじゃん」 これはもはや、君の口癖と言っていい。 すぐ、言う。 昨日も言っていた。 「そっちのほうに住みたい」という友達に、 「家決まるまで、うちに住めばいーじゃん」 わたしは慌てて、「うちでよければね!」と付け足す。 うちは、2人暮らしの1LDK。 キッチンはキッチンであり、それ以上の役割を持たせることが難しいタイプの間取りで リビングにはテレビとソファーがあって、同居人の私室を兼ねている。私室って言っていいのかわからないけれど。 たったひとつのドア付き