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「体は何でできているの?」

 銭湯で帰り支度をしていると、脱衣所に入ってきた親子の子どもが母親にそう尋ねた。
「水かなあ」
 と母親は答えた。きわめて真っ当な答えかもしれない。
 もし私が母親だったら、この素朴すぎる質問に対してどう答えただろうか。
「体は骨と皮と血と肉でできているのよ」
 あまりにも冷たすぎるだろうか。でもかといって、
「○○ちゃんの体はパパとママの愛でできているのよ」
 と答えるのも何だか綺麗ごとすぎてこそばゆい感じがする。
 「じゃあ箱は何でできているの?」
 その子は再び母親に尋ねた。でもその直後、私は荷物をまとめて脱衣所を出ていたので、残念ながら母親の答えは聞けなかった。
 そういえば私もその子と同じ幼稚園ぐらいの年齢だった頃は、「チューリップってどんな花?」とか、「『みなしごハッチ』のみなしごって何?」など、よく親を質問攻めにしていたのを思い出した。
 きっといつの時代も、4歳か5歳ぐらいの子どもは何でも聞きたがるお年頃なのかもしれない。

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