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常に予想を上回らなくてはならないのか

SNSは、きっと悪魔が開発したツールです。
そう思いませんか?
だって、X(旧Twitter)やインスタグラムのタイムラインを眺めていると、時間がいくらあっても足りないですから。
次から次へと新しい、魅力的な投稿が流れてきて、リプライしようものならあっという間に1時間過ぎていた、なんて経験は誰もが身に覚えがあるのでは?

さて、今回は別に、SNSに使う時間を減らして、もっと有意義なことに時間を使いましょう、などという意識高い系の記事ではありません。
Xの読書アカウントのタイムラインに時折流れてくる感想にあったワードに対して、僕が覚えた違和感を綴ってみたいと思います。

そのワードとは、
「展開が読めてしまったのでつまらない」
というものです。
まずは僕が、どうしてそのワードに違和感を覚えたのか、というところからお伝えしますね。

染井為人著『芸能界』

僕はミステリ作品が多めではありますが、基本的にはどのジャンルでも、気になった本は読むようにしています。
そしてつい先ほどまで、『芸能界』という小説を、オーディオブックのAudibleで聴いていました。

人類で10本の指に入る発明ではないか、とも思えるAudibleの良さは別の機会に触れるとして、お話したいのはこの『芸能界』についてです。
役者、芸人、プロデューサー、マネージャーなど、芸能界に携わる人間たちの生きざまが描かれている小説『芸能界』

こちらの作品、結構展開や結末が読めやすい、というか予想通りだったんです。

芸能界という大衆の関心事の高い世界の話だから、あまり想定を超える着地点に持っていけなかったのかもしれませんし、作者が読者に対して良かれと思って与えた材料が多すぎたのかもしれません。

一例を挙げると、「相方」というタイトルの芸人の短編がありました。
それは、心が弱っている時だったら、涙していたかもしれないような、とてもいい話でした。
しかし、僕は序盤で既に、この話はきっとこういう結末になるのだろうな、ということが予想できてしまったのです。
そして、その通りの結末に着地しました。

先ほどのワード「展開が読めてしまってつまらない」が、一瞬頭の中をよぎりました。
この作品も、そのワードで括れる小説なのかと。
しかし、それからすぐに、これまでになかった思考が浮かんできました。

果たして読者の予想を上回らないことが、そんなにもいけないことなのか・・・?

序盤や中盤で展開が読めたり結末が予想できてつまらないのは、ミステリ作品のようなジャンルだよね?
そりゃあ、最初に犯人が分かってしまったり、動機やトリックが分かってしまったら、普通はつまらないよね?
敢えて最初にそれらを読者に開示して、探偵や刑事が犯人を追い詰めていく流れを楽しませる作品もあるけど、そうでない場合はつまらないよね?

でも、今回取り上げた『芸能界』のような作品の場合は、それもありなのではないか・・・。
そう思いました。

なぜかと言うと、僕が結末を簡単に予想できたという要素を分解していくと、少なからず「こういう結末になってほしい」という自身の願望も含まれているような気がしたからです。

そういう結末で締めくくられて、実際に気持ちが良かったのです。
あぁ、こうあって欲しいという結末が実現して、みんなが幸せになった・・・。
そんな風に思えたんです。

どんでん返しや意外な結末がもてはやされていますが、読者の心に素直に訴えかけてくる作品もいいものです。
展開が読めたからつまらない、という一面だけを見て切り捨てるのではなく、小説は色んな角度から楽しんでみてもいいかもしれないな、と思いました。
あなたは、どう思いますか?

今回も最後までお付き合いいただきありがとうございました。
ではまた、次回の記事でお会いしましょう。



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