ฮานามิ

ฮานามิ

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出し惜しんだものはとっておけない。行き場なく循環できず、ただ腐っていくしかない。それに、鮮度を保つそれに、二度と触れることはできない。それは自分のための来る日の、しかるべき相手に手渡すための蓄えになることはない。惜しんだという実感が残る限りそれは腐ることしかできない。

    • これは怒りか悲しみか

      これは悲しみだ 悲しみだから、まだ心はうつくしい そうわかって、ほっとした

      • 和菓子ってすごい。和菓子の世界に住んでみたい。さざなみもさわらびも和菓子のほうがぜったいにかわいい。わたしの心を不穏にさせるモチーフすらも平穏な気配でなんなら和んでる。自身の内面は荒磯なのにどうしてか人を和ませるわたしの姿は、実は和菓子の親戚でしたか?

        • そっと、

          でもたしかに うっすらと、 あかるい 朝は薄く張った氷のよう 上から見ると 下からも見られているみたい ぞっ、としたので ぱりん、ぱり、ぱり、 指を突き立ててしまいたい ブーツの丈夫な靴底で かしゃ、かしゃり、と踏みたい 薄明るい氷に透ける まだ、ひたひたを迎えない ぐずぐず さめざめ うやむや全部が 金魚のように泳いでる 仄暗い時にわたしは 氷を割って、薄目を開ける

        出し惜しんだものはとっておけない。行き場なく循環できず、ただ腐っていくしかない。それに、鮮度を保つそれに、二度と触れることはできない。それは自分のための来る日の、しかるべき相手に手渡すための蓄えになることはない。惜しんだという実感が残る限りそれは腐ることしかできない。

        • これは怒りか悲しみか

        • 和菓子ってすごい。和菓子の世界に住んでみたい。さざなみもさわらびも和菓子のほうがぜったいにかわいい。わたしの心を不穏にさせるモチーフすらも平穏な気配でなんなら和んでる。自身の内面は荒磯なのにどうしてか人を和ませるわたしの姿は、実は和菓子の親戚でしたか?

          mango

          マンゴー 木から落ちて マンゴー 陸をころころ マンゴー 川にちゃぷん マンゴー 海をすいすい マンゴー 虹を滑って マンゴー 夕焼け空になった マンゴー マンゴー わたしの胸からマンゴーの香り またすこし熟れてみずみずしい 気持ちのあるところ 湯気が立つところ

          そよ、ゆら、ずき、どき

          しま、さら、ちゅん、ふら しく、つや、しゃか、うき いろーんな音がする いろーんな、いろーんな あたたまっていく音がする からだ、包まれていく こころ、流れ出してる あたま、見守っている しゃら、くす、きら

          そよ、ゆら、ずき、どき

          ハチミツのように

          このさみしさを大切に抱えていこう。できればこんなふうに甘さだけ味わって屈託なく。さみしさが、消えてなくなれば穏やかに、跡形もなくなれば健やかに。成れるような、そんな気がしていたけれど。慣れるような、そんな気もしていたけれど。 帰り道がとてもとてもさみしく、こんな気持ちはもう、よしてほしい。はやく消えて無くなってほしい。もう二度と味わいたくない。 一人でいてはならない。あなたといて嬉しい人と、あなたがいて嬉しい人と、あなたにはいてもらわなくっちゃ。 わたしを通り過ぎていく

          ハチミツのように

          さみしさは、追われるのでも慣れるのでも蔑むのでも怖がるのでも隠すのでも塗り潰すのでもなく。ただ抱きしめて抱えていくもの。わたしにとって大切で必要な色と温度と匂いと味がそこにはある。そう思った帰り道のことを冷たい風に揺られた夜を、もう忘れない。きっともう思い出さないし、忘れない。

          さみしさは、追われるのでも慣れるのでも蔑むのでも怖がるのでも隠すのでも塗り潰すのでもなく。ただ抱きしめて抱えていくもの。わたしにとって大切で必要な色と温度と匂いと味がそこにはある。そう思った帰り道のことを冷たい風に揺られた夜を、もう忘れない。きっともう思い出さないし、忘れない。

          涙はやさしく

          寝そべるわたしのこめかみを撫でた。ゆっくりと、するするすると下りていき、耳の凹凸にちいさな池のような水たまりをつくった。 涙ってやさしいんですね、涙って。わたしは池のほとりに腰掛けて、足をゆらゆら。 重力っていいもんですね、涙にも重さと形があるとわかるのは、なんだか心強くて。おや。池のほとりにいるのは、わたしひとりではないらしい。 清く新しい気持ちで、朝の霧を眺める自分を、音を立てずに窓を開け、部屋の中へとその霧を迎え入れる静かな自由を、目を閉じ耳を澄ます横顔を思い浮か

          涙はやさしく

          アイスクリームを愛しふたりは、

          アイスクリームをごちそうし合ったこと、「世界のどこかでまた会おうね、絶対に」と言ってぎゅっと肩を抱きしめて別れたことそれが数年前彼女のくれた手紙の言葉そっくりそのままだったこと、中身の見えない高速バスにきょろきょろと手を振ってくれていたその姿、てきぱきとしたところのびのびとしたところ、ずっと笑っていてくれたこと、自分のために生きているところパンダのぬいぐるみに話しかけるところ、ねえ今日も最高にかわいいのはあなただよ、どこからどの角度からも最高に、あなたはかわいくて格好良くって

          アイスクリームを愛しふたりは、

          いないわたしたち

          もういないわたしと まだいないわたしと いまもいなくなっていくわたし 一体なにがちがうのだろう いないわたしたちは ふりむきもせず笑い いないわたしたちは 声も出さずに泣いている いないわたしたちにわたしは もう触ることができない

          いないわたしたち

          マフラーを結んで

          どしん、どしん、と大きく階段を踏みつける、いつもより幾分力強いその足音に、また雑用を頼みに来たか、と少し億劫な気持ち。私は立ち上がる。 耳が遠い祖母にとって、目が合うまでは誰も存在していないようなものだ。階段を上がりきったところの洗面所へ向かう私が、足音をたててどんどん彼女に近づいている私が、彼女の世界にやっと現れる瞬間、彼女は私を目でとらえる。見えるものだけ。見えないものは、ないのと同じ。老いると、そんな世界が開けるのかもしれない。 「マフラーのむすびかた、教えて」

          マフラーを結んで

          奪われていなかった。靴、箱の中にいくつもいくつもしまい込んで。靴を奪ったと恨み、睨みつけていた先には、私に靴を、私にいくつもの靴を、くれた人がいた。奪われていなかった。そうすることしかできなかった。私が選んだことだった。持ち主のいない実態のない靴を履き、そして私は脱いだ。

          奪われていなかった。靴、箱の中にいくつもいくつもしまい込んで。靴を奪ったと恨み、睨みつけていた先には、私に靴を、私にいくつもの靴を、くれた人がいた。奪われていなかった。そうすることしかできなかった。私が選んだことだった。持ち主のいない実態のない靴を履き、そして私は脱いだ。

          どこへ行っても

          同じだって思えた、雨あがり散歩の帰り道。 どこへ行きどこに住む。どこにいるどこにいた。そんなことで特別になれるかもしれないと、そんなオプションでもなければ、なんだか物足りなくて心細く感じていたけれど。 どこへ行っても、わたしはこうして。 列をなした鳥が飛べば風を見上げる。夕方色がしみわたる空気を吸い込みたいから、靴をつっかけて散歩に出る。雲ばかり見て冬ばかり待つ。出番の短い三日月が羨ましい。手を繋いだらあたたかい。熱いスープは冷めるまで待てない。虫歯で噛むと痛い。嫌々起

          どこへ行っても

          このうすくあつい鈍感さ

          指を掘/彫ってしまった。 右手の親指の第一関節を、左手の親指の爪で。ほんの少し、厚さ0.1ミリに満たないけれど、深さは深さであり、浅さは浅さである。 ふかさふかさ、あささあささ。繰り返すと擬態語や擬音語のようにも思えてくる。ふかさふかさと枯葉のつもった木の下は真っ黄っき。ふかふかでもなく、かさかさでもない。ふかふかでもあり、かさかさでもある。ふかさふかさ。響きから連想する景色と感触が出会うところ。文字で見てみるとまた違う発見がある。あささを眺めたら「あちち」と栗を両手で転

          このうすくあつい鈍感さ

          言葉に上手い下手がある、というのは考えたことがなかった。「あの人は英語が上手い」と言う誰かの言葉を耳にして、なるほどそう言う考え方があるかと眺めるだけだった。それなら、わたしは下手でありたい。下手は楽しい。下手がしたい。わたしは外国語を話したい。言葉を借りて集めて選んで音にして。

          言葉に上手い下手がある、というのは考えたことがなかった。「あの人は英語が上手い」と言う誰かの言葉を耳にして、なるほどそう言う考え方があるかと眺めるだけだった。それなら、わたしは下手でありたい。下手は楽しい。下手がしたい。わたしは外国語を話したい。言葉を借りて集めて選んで音にして。