涙はやさしく
寝そべるわたしのこめかみを撫でた。ゆっくりと、するするすると下りていき、耳の凹凸にちいさな池のような水たまりをつくった。
涙ってやさしいんですね、涙って。わたしは池のほとりに腰掛けて、足をゆらゆら。
重力っていいもんですね、涙にも重さと形があるとわかるのは、なんだか心強くて。おや。池のほとりにいるのは、わたしひとりではないらしい。
清く新しい気持ちで、朝の霧を眺める自分を、音を立てずに窓を開け、部屋の中へとその霧を迎え入れる静かな自由を、目を閉じ耳を澄ます横顔を思い浮かべる。
涙の池で、あなたを待っています。
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