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模範解答の人生を送れなかった私

ー模範解答の人生とは。
小さい頃から家族や周りの人たちに愛されて、自己肯定感を養うこと。
いじめにもあわず、クラスの中でみんなと仲が良かったこと。
部活動や勉強も成績が良くて、先生からも信頼されていたこと。
勉強も部活も頑張りながら、素敵な恋愛をしてきたこと。
大切な友達がたくさんできていたこと。
希望する大学に一回で合格して、大学でもたくさんの仲間ができていたこと。
留学やバイトなどいろんな経験をして、知見を深めてきたこと。
大手企業に就職して活躍してきたこと。
またはそんな大手企業に就職した恋人と早々に結婚をしたこと。
子宝に恵まれて、大変ながらも支えてくれる両親もいて、自分の家族がいること。
余裕ができたら、かつての友人たちに連絡をとって、集まろう!って言えること。
仕事にも復帰できて、仕事と家庭を両立しながら日々笑顔でいられること。

この経験を、30までに終えていること。

私は?

小さい頃から姉妹で比べられて、負けないようにと必死に無難に生きてきた。
ローテーションのいじめは避けられず、部長として嫌われ役も買ってでた。
勉強も中くらいで、運動はもっとできず、大学まで彼氏もできたことがなかった。
今も連絡を取る友達は、片手で足りてしまう。
私大に入って親に迷惑をかけて、毎日を無駄に過ごしてきた。
中小の県外企業に就職したら昭和初期のようなとんでもない会社だった。
そんな会社を選んだ自分に、自信がどんどんなくなっていった。
恋愛くらいはと色々取り組んだけど、どれも一年続かなかった。
やっとの思いで、転職を成功させた。
できることも増えて、これから成長できる、まだ私は変われると思った。

そんな時、模範解答の人生を送る、かつての友人から連絡が来た。
「みんなで集まろうよ!」

その子のプロフィールには、満面の笑みの子供と、その子が抱き合っていた。
二人ともそっくりの笑顔だった。

……ああ、きっとこれが正しい。
そもそもずっとレールが違ったのだ。
私のレールは乗り換えもない、田舎に続く古びたレールだ。
彼女の方に絶対に行けないし、彼女が私の方に来ることもない。
最初から、身分が違ったのだと気がついた。
それでも彼女は優しかったから、今幸せなんだと知れたことは、嬉しい。
嬉しいけれど、頭の中でずっとハウリングしている声がある。

<私は?>
<私は何をしている?>
<あれが正しい人生だ>
<私は転職しただけじゃないか>
<仕事も家庭も友人も健康も全部持ってるよあの子は>
<同じ時間生きてきてお前は何をしていたのだずっと?>

どんどん声は大きくなって、私の思考を支配している。

結局いつまで経っても、周りと自分を比べてしまう性格の私だ。
ありのままの自分を良しと思えない私は、彼女のようにはなれない。

転職でようやく見えてきた自信のつけ方も、
綺麗さっぱり飛んでいったように思う。
女としての責務を全うしていないことの罪悪感も、
親へ孫を見せることができていないことへの罪悪感も、
全部全部、家庭がないと幸せになれないと言われているようで、
独身を肯定する人が増えてきたとしても、こうして身近に目の当たりにすると、
「ああやっぱり、なんだかんだこっちが模範解答なのだろう」と思うわけだ。


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