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原井さんは気がつかない

メールソフトを開き、着信メールを確認していた時のことである。

多くのメールは、大概、どこかのお店の広告だ。
Amazon先生が思いもかけない本をオススメしてくることもある。
そんなメールの中に、いつもと違う空気を放つメールがあった。
早速開き、内容を確認する。

このたびは、羽田空港とnoteがコラボして開催した
「#旅する日本語」投稿コンテストに
ご応募いただきありがとうございました。
合計2,172件(noteの投稿)の中から、
はなまるえさまの作品「妙高山が見ていた」
「入賞(企業賞)」に選ばれました!おめでとうございます!!!

へぇ、こんなことまでメールしてきてくれるんだ。
へぇ、おめでとう。

…………………!?……、、!!!!!!

事実を把握するまでに、数秒の時間を要した。
二の腕の毛細血管が、ブワワワワと沸き立つ。
鼻の頭が、犬の鼻ようにモゾゾゾゾと動いた気がした。 

note運営事務局の方からの個人メールだったので、
noteフォルダに振り分けられなかったことが、
気づくのに遅れてしまった原因だった。
送信日時は、前日の13時頃。
なんと、半日以上もこの吉報を放置していたのである。

事実をきちんと確認しようと、
メールに添付されてた結果発表のサイトを見に行く。

するとそこで、さらなる驚きが待ち構えていた。
私が以前、スケッチをする人、という記事で紹介した、
原井浮世さんの「色節の島」という作品が、
なんと、最優秀作品に選ばれていたのだ。
選んだのは、あの映画、おくりびとの脚本をされた小山薫堂氏である。
私も色節の島は、受賞できると思っていた。当然だと思う。
その当然が現実となった喜びと同時に、
自分の文章を見る視点も評価してもらえたような気がして
とても嬉しかった。

原井さん! やった! 原井さん、アンタはやる男だと思ってたよ!
小山薫堂氏に評価される前に、
原井さんのことを記事にしておいてよかったわい!
やっぱり私の目に狂いはなかった!

最優秀に君臨する原井さんの記事をパソコンで見ながら、
大きな声で偉そうな独り言を放つ。一人で大暴れである。

私という人間は、自分の喜怒哀楽には、
なかなか素直になれないのだが、人のこととなると、
気持ちを爆発させることができる性質らしい。
原井さんの最優秀に歓喜できたおかげで、
自分のことも一緒に喜べたことが、とても有り難かった。
早速、原井さんの最優秀作品の記事に祝福のコメントを寄せる。

原井さんは、コメントに書かれたことを、
とても素直に受け取って、喜んでくださる好青年だ。
きっと、無邪気に喜ぶ返信が見られるに違いない。
いつもはコメントに返信を期待しないが、この時ばかりは、
最優秀選手のマイクパフォーマンスに期待していた。
無邪気に喜ぶ原井さんを、是非この目で目撃したい。

しかし……
数時間が経過しても、返信がない。
そりゃそうだ、お仕事もあるだろうし、ご家族もいる。
原井さんのフリータイムが訪れるまで、動きがないのは当然だ。
ここは悠然と構えて、返信を待とう。
私は、買い物に出掛けた。

帰宅し、noteを確認。まだだ。
原井さんのフリータイムは訪れない。待て。

私は人間でありながら、
待てをされてる犬の気持ちがわかりかけてきた。

その後も手が空いたら、ちょこちょこ確認していたのだが、
原井さんからの返信はない。やはりお忙しい方なのだ。
そんな日々の生活の中、あんな良質な作品を書き続けている。
恐ろしい。

夕方頃、夫が仮寝から起きてきた。
「返信来たかい?」
事情は説明してあったので、夫も気にかけていたようだ。
まだであることを伝えると、夫が言う。

「もしかしたら気づいてないんじゃないの?」

その可能性は充分ある。
このまま気が付かなかったらどうしよう、と話すと、

「そしたら代わりに、はなまるえが最優秀もらえばいいじゃない!」

夫がニマニマ笑いながら言った。
大変魅力的な提案ではあるが、夫よ、そういう裏取引は存在しない。

「原井さーん、原井さーん! 最優秀よ!そろそろ気づいてー!」

私が埼玉から語りかけたところで、その声は風にかき消される。
埼玉銘菓・十万石まんじゅうが通常営業で語りかけている風の音に
私のような若輩者が、かなうわけがない。

私自身、半日以上メールに気づかず放置していたのだから、
原井さんにも、同様のことが起こっている可能性はある。
それと同時に、原井さんは吉報だけでなく、
私の祝福コメントも知らぬうちに放置しているのだ。

何という焦らしのテクニックだろう。
これはもしや、ご自身の恋愛経験において
培われた高等テクニックなのではあるまいか。
原井さんのプレイボーイっぷりに震える。
今日から原井さんのことは「焦らしの原井」と呼ぼう。

そんなどうでもいい決意から、更に数時間が経過し、
私は新たな記事を書くためにnoteのサイトを開いた。
すると、お知らせが届いている。詳細を確認する。
私は光速で最優秀選手のマイクパフォーマンスを見に行った。

原井さんのコメントは歓喜に溢れていた。
私の入賞のことにも触れてくださり、嬉しい言葉が綴られている。
その好青年っぷりを再確認できるような
素晴らしいマイクパフォーマンスに思わずうなづく。
大満足である。


最優秀の吉報を、当人が知らず、私が知っているという不思議な状況は、
終わってみれば、なかなかコミカルで楽しいものであった。
不思議で楽しい時間を、原井さんが私にプレゼントしてくれたのだ。
いいもん貰っちゃったな♪ と思ったと同時に、ハッと気がつく。

もしかして、これも「焦らしの原井」のテクニックなのか!?

文章だけでなく、
日常でもこうして、彼は人の心を動かしているのかもしれない。

原井浮世、やはり恐ろしい男である。



当記事は、私の祝福コメントに対する原井氏の長時間による放置プレイに
抗議するものではありません。
原井さん、突然、話題にしてしまって、スミマセンでした!
改めておめでとうございます!

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