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フリースを買った日に

その日、私は、ユニクロにふわふわフリースを買いに行った。
今年の冬は寒い。
ふわふわな物を着れば、何とか冬を乗り切れるかもしれない。
そんな私の目論見と、ユニクロのセールが、バッチリと噛み合った。

売り場に向かうと、1280円で特価だったはずのフリースが、
一部だけ990円という破格値で売られていた。
何か違いがあるのかと、店員さんに聞くと、
サイズが揃わない色のフリースを、特価にしたのだと言う。
もちろん特価品から試着し、グレーのふわふわフリースを選んだ。
しかし、ふわふわと、私の体型が相まって、
若干、グレーの色をしたクマ感が否めない。
だが、そんなことを気にしてなどいられない。
部屋で寒々しく冬眠状態になるくらいなら、
正々堂々、クマになろうではないか!
私は、鼻息荒めに、2着購入した。

帰宅し、早速、ふわふわのクマになりながら、noteを見る。
お知らせのアイコンをクリックすると、

にわのあささんがフォローしました。

の文字が飛び込んできた。

「んだっは!」

驚きの声は、おかしな擬音となり、口から飛び出した。
まぁ、要するに、かなり嬉しかったわけである。


にわのあささんの作品との出会いは、
noteをはじめて、ひと月も経たない頃、
結婚の挨拶という作品を読んだのがきっかけだった。
キリンが開催した「#また乾杯しよう」の受賞作である。
読んでみて、こりゃ賞とるよぉ、、、と参ってしまった。

その後、本当に参ってしまう作品を、にわのあささんは投稿する。

これは私も参加した、#旅する日本語2020の
已己巳己(いこみき)をテーマにした作品である。
京都伏見稲荷の千本鳥居を、已己巳己と表現したのを見て、
「その手があったかー!」
と膝を打った。
已己巳己の文字を赤くすると、まるで鳥居のようだ。
もうこの辺から、あささん独特の表現の魔法にかかった気がした。

395文字の物語は、神か魔物か、不思議な気配が漂う。
早朝の空気は冷え冷えとして、実にサスペンスフルだ。
言葉が、歌うように、さらさらと綴られ、
自分が本当に、早朝の千本鳥居を歩いている錯覚にとらわれる。

いや、本当に錯覚なのだろうか。

肉体だけが、自分ではない。肉体を司る、この意識も自分のものだ。
私の意識は、どこへでも飛んでいける。
私は千本鳥居を歩いているのだ。
心なしか、呼吸をすると、肺が冷たく感じる。


にわのあささんの作品を読むと、自分の表現はこれです。
という、信念のようなものを感じる。
自分の味を守る名店のごとく、そこに迷いを感じさせない。
抗えない、自分のこれという味があって、
そこに、筆が引き寄せられているのではないか。
そんなことを邪推してしまうくらい、表現に、まっすぐな意思を感じる。

そのまっすぐは、私の目を潰しそうなほど眩しい。

にわのあささんがフォローしました。

この人にフォローして頂けるくらいの何かを、
自分が書けた、書いた、ということなのだろうか。
もし、そうならば、本当に嬉しい。
いやはや、よかった、よかった、と、私は頷きながら、
にわのあささんのアイコンに目を向ける。

ん?

何だか、妙に、そのアイコンの色が気になってしまった。
どこかで見たような色だ。
思わず腕を組んで、考える。

あっ!

にわのあささんのアイコンは、その日買った、ふわふわフリースと、
全く同じ色をしていた。


執筆当時、にわのあささんのアイコンは、
ブルーがかったグレーのような色をしていました。
その色が、買ったフリースの色ととても良く似ていたのですが、
現在、にわのあささんのアイコンは娘さんの可愛い絵に変更されています。

#2020年の推しnote

7月、高校3年生 も、ぜひ読んで欲しい作品です。
その圧倒的な表現力にぐるんぐるんと舌が巻き上がって戻りません。
どうしてくれよう。


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