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「推し、燃ゆ」を読んだ

今日は芥川賞受賞作 宇佐美りんさんの「推し、燃ゆ」を読んだ。
若干21歳にして、芥川賞受賞。
タイトルの通り、今まさにこの時代のサブカルチャーを題材にした物語。
どんな作品か読んでみたくなる要素はたくさんあった。

作家さんとは、書き出しの文章にどれだけの時間を費やすのだろうか。
又吉直樹さんの「火花」もそうだったが、「推し、燃ゆ」の冒頭も見事に読み手の興味を捉えてくる。
こんな秀逸な書き出しを書くには、1日やそこらで思いつくのだろうか。
もし、国語の1時間の授業で「読み手に興味を持たせる冒頭文を考えてみよう」くらいの時間で思いつくようなものならば、もうこの人たちは私たちが持ち得ない特別な能力を持っているとしかいいようがない。
本当に、それくらいの衝撃で、冒頭の1文が自分を捉えてきたのだ。

読み進めるうちに、芥川賞だなとつくづく感じさせられた。情景描写が絵画のように鮮明で、主人公の目線や心情がとてつもない文章力で表現されている。文学が美術化されているものという感覚。それが、私の芥川賞のイメージである。
そして、芥川賞に多く感じられる、主人公の鬱屈したキャラクターがありありと表現されている。体の重さ、焦燥感、生きづらさが自分でも体感しているかのように伝わってくる。
舞台が現代なのに、古典的な純文学の匂いがした。

学生のころは、純文学って一体なにが言いたいの?とストーリーの結末の後味に慣れることができず、メッセージ性ばかりを探していた。
今は違う。人間の持つ表の顔だけではなく、だれもが持つ弱さのような表現しようにもしきれない、機微をどれだけ文章として表すことができるか。そんな挑戦を芥川賞作家の先生方はされているのだろうと思う。

ネタバレになるから、あらすじではなく、自分が読んで今感じたことをそこはかとなく綴ってみた。
若干21歳、大学生が書いたというこの作品。
彼女の今後に期待するし、応援していきたい。そして、若者だという世代も文学に通じている才能多き逸材がいることを希望として持ち続けたい。


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