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嵐のような弁護士

「もしもし、私は〇〇法律事務所のダンディ(仮称)です。
今どちらにいらっしゃいますか?」

土曜日の10時44分、電話で起こされた。
新しく契約して下さった弁護士だった。


私「家にいます。」

弁護士「実は私、(同じ市)にいるんですよ」

私「ええ!?そうなんですか?
私は今ー寝起きなので、出かけるのに時間がかかってしまいます」


弁護士「今、花さんの家の前にいるんですが、駐車場に停めてもいいですか?」


私「え!?家に来てるんですか?どうしよう…寝起きなんですが…
とりあえず駐車場に停めて下さい。
今玄関に降りていきますね」


私は目ヤニを指の腹でこそげ落としながら、パジャマにはんてんを羽織って玄関を開けた。


弁護士は大きなバンを駐車していた。

「すいません!突然来てしまって!」と何度も言っている。

爆笑した。

休日に自家用車を運転して突撃してくる弁護士なんて、見たことがなかったからだ。


片付ける暇もなく、弁護士をリビングに通した。

散乱した衣服、ダンボール、シンクに並んだ空きビール缶。

洗っていないフライパンやボウルが水に浸かっている。

テーブルの上には書類がミルフィーユ状に積み上がっていて
周囲には株の葉のじゃこ炒めと、塗り薬、飲み薬。


弁護士「ビールは一日に何本飲みますか?」
「家賃は?」「収入は?」次々と質問をしてくる。

私は正直に答えた。


この家が私の本性だ。
だらしなくて片付けも整理整頓もできない。


事務所でお会いするのであれば、失礼が無いように少しはマトモな服を着て化粧もした。


弁護士「この机を見ただけで、お母さんが書類管理ができないことが判りました」

私「…はい。そうなんですけど…嫌だなー。恥ずかしい」

弁護士「恥ずかしがることはないですよ!この机だけで一目瞭然ですから」

何のフォローにもなってない!!笑


弁護士「お出かけすることはありますか?どこに?何で?」

私「女性団体に入っていて、月一位で出かけます」

弁護士「何という団体ですか?代表者の名前は?」

答えると「正解!」という。

嘘つきか否かを見ている。

私「何で知っているのですか!?」

弁護士「ウチの事務所に冊子が送られてくるので」

私「見て下さってるのですか!?私よく投稿しています」

弁護士「そうなんですね」
そこには興味なさそう。


弁護士「これからは領収証は私に全部送って下さい」

私「えーーー(面倒くさい)……」

弁護士「できなかったら、また私が取りにきますから!」

私「はい。…そうして下さい」


そして大きな古いバンに乗って帰っていった。

身なりや車に高額使う趣味はないらしい。

信頼できる人だと思った。


この弁護士は大口を開けてよく笑う。裏表が無さそう。

大体私の依頼を引き受けても、手間ばかりでほとんど収入にはならない。

それでも引き受けて下さった。正義感の塊だ。

ずっと信用できない弁護士で悩んできたが、この人にお任せして荷物を卸そう。


諦めずに声を上げてきて良かった。

いつか必ず、信頼できる人に巡り会える。


これからよろしくお願いします。ダンディ弁護士。



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