伊豆の旅②

露天風呂からは大島がきれいに見えた。
視力が悪く、普段は眼鏡に頼りっきりの私でも、裸眼ではっきりとみえたほどだ。
湯船の暖かさと冷たい空気のコントラストで、とても気持ちが良かった。
緊張やストレス、恐怖で縮こまった体が、ゆっくりとほどけていった。
貸切風呂は満杯だったので、夫婦で分かれて男湯と女湯の大浴場にそれぞれ入ったのだが、そこは空いていて、私ともう一人だけだった。
その人は、私より先に露天風呂に入っていた。
みしらぬ人なので、もちろん会話などはないが、同じ湯にふたり、大島と向かい合った状態で並んで入った。
つかの間の隣人からもリラックスが伝わってくる。
心の中で、お疲れ様ですとつぶやいた。


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