「令和の大泥棒・次男坊、黄色いナガグツを手中に収める」の巻🍼
風のように這い、地を揺るがして泣く。
それが令和の大泥棒・次男坊ッッッ!
10か月にわたる人生経験のなかで、俺は"わかって"いた……
チャンスは一瞬。
そしてその一瞬をモノにできるかが
腕の見せ所だってことを。
🍼大泥棒の優雅な日常だぜ
昨日の俺は、保育園なる場所で1日を過ごした。
はは、驚いたか?大泥棒ったって、普段は普通に日常を過ごしている。そんなもんだ。
センセイとグーチョキパー遊びをして盛り上がっていた頃合いだ。
「ママ」が俺を迎えに来た。
はは、なぁに、すぐわかったさ。
ドアから聞こえた「こんにちはー!」って声。ありゃあ「ママ」だ。腹にいるときから聞いてるんだから、間違いようがねぇよ。
思わず満面の笑顔になった俺を、センセイはめちゃくちゃに褒めてくれる。俺は声だけで「ママ」がわかるんだぜ、すげぇだろ、センセイよ。
🍼へへ、保育園のアイドルだぜ
「ママ」は俺を抱っこすると、そのままアニキを迎えに行く。
2歳クラスでは、諸センパイ方が寄ってきては「赤ちゃんかわいい〜🥺」「赤ちゃんばいばーい!🥺」と挨拶に来てくださる。
ウッス先輩ッッッ!!!ウチのアニキがお世話になってますッッッ!!!精一杯手を振る俺。
ここまでは至っていつもの保育園風景だ。
なんてこたぁねぇ。でもな。
アニキと共に玄関まで行った、そのときだった。
🍼大泥棒・次男坊、見参ッッッ
黄色くて、つやつやした、あれは!!!
アニキも今日履いていたやつ!!!
「ナガグツ」とかいう履き物じゃあねぇか!
アニキの冴えないグレーより、黄色がキラキラでカッコイイ!「ママ」の履き物の隣にある!アレ!しまじろうと同じ黄色いやつ!
欲しい!欲しい欲しい欲しい!
ぴょんぴょこぴょんぴょん、俺は跳ねた。
抱っこ紐のなかで、懸命に跳ねた。
黄色いナガグツ欲しい!!!!!
うおおおおおおお!!!!!!!!
\ヘンシンッッッ!/
狙った獲物は逃がさない!
令和の大泥棒見参ッッッ!!!
次男坊様たぁ俺のことよ!!!
仕留めて見せる……あの黄色いブツを!!!
🍼流れるような手際、惚れ惚れするぜ
ママ「ちょっと次男くん、跳ねないでってば、お兄ちゃんに靴下履かせられないよ〜💦」
「ママ」よ、それどこじゃねぇ。
俺には一世一代の大仕事があるんだ…
なににも変えられない、譲れない瞬間が、赤ちゃんにはある。覚えておいてくれよなッッッ!
ママ「だめだ、おんぶにしよ。長男くん、ここに座ってナガグツ履こうね」
そういうと「ママ」は、抱っこ紐の肩紐を外して、俺をおんぶの向きに動かし始めた。
今だ!!!!!
「ママ」が俺を背後に移動させるその瞬間、俺の体はナガグツに"最接近"するッッッ!!!
そのチャンスを逃してはならないッッッ!!!
次男坊大泥棒の呼吸!参の型!
「意外と強い握力」ッッッ!
うおおおおおおおおおお
とったーーーーーー!!!!!!
黄色いナガグツ、仕留めたりー!!!!!
🍼仕事のあとのおんぶは格別だぜ
片方だけだが、今日のところは許してやろう。
ママ「よし、じゃあ2人とも帰ろうね〜パパが道の途中で待ってるよ〜」
アニキをベビーカーという俺たち専用のクルマに乗せると、「ママ」と俺たちは出発した。
首尾は上々。なにしろ、誰1人俺の「仕事」に気づいてなどいないのだから。後ろをふりかえって、俺を目視できる者もいやしない。
くっくっく。
黄色いナガグツは俺のものだ!
🍼パパと俺との絆だぜ
「ママ」におんぶされながらの家までの道中。
苦労して手に入れた獲物をじっくりと検品していると……反対側から歩いてきたのは「パパ」だった。
「パパ」は、「ママ」とアニキと俺と同じ家に住んでいる。腹の中にいるとき遠くから声が聞こえた気がするが、よく覚えていない。
俺が生まれてからしばらくは、アニキは「ママがいい!」って感じでさ。だから俺と「パパ」とは、「ママ」をアニキに譲って過ごしていたもんだった。
夜通しミルク片手に語らったことだって何回もある仲だ。絆は強く、深い。
🍼さすが俺のパパだぜ
アニキ「おーい、パパ〜!」
パパ「遅くなってごめんね。長男くん、おかえり!おーい、次男くん!」
俺「あう(おう、「パパ」。元気してたか?)」
パパ「……?あれ、次男くんがなにか持ってる……」
ハッ!しまった!俺としたことが油断した!
パパ「次男くん、黄色いナガグツ持ってるよ、なにこれどうしたの?!」
ママ「え?!ナガグツ?!え?!」
俺の手から、あっという間に
愛しの黄色いナガグツが奪われる。
ああ〜!俺の黄色いナガグツぅ〜〜〜!
🍼さらば、俺の黄色いナガグツ
「おうちに帰るまでが泥棒活動です」
つまりそういうことか。
獲物を逃した悲しみから1人項垂れていると、「ママ」は言った。
ママ「パパがナガグツ返しに行っているあいだ、桃太郎を見ようか」
保育園から家までの道中には、ベンチがある。
「桃太郎」というのは、そのベンチに描いてあるイラストのこと、らしい。
え?いやいや正直それどこじゃありませんて。
黄色いナガグツ…さらば永遠に……😢
🍼俺のママはおっちょこちょいだぜ
アニキ「わーい!桃太郎だー!」
はしゃいでいるアニキ。しょぼついている俺。
「ママ」はというと、ちょっとお疲れの様子。
ママ「はぁ、ベンチ座っちゃおうかな〜」
?! あっ! だめだママ!
今日は一日雨だったんだぞ!
俺の願いは届かず、「ママ」のお尻は濡れて……
俺の蒙古斑みたいにまあるく黒くなった!
ママ「やだー!濡れちゃった!」
アニキ「ママびちょびちょ〜!」
ぷぷっ!「ママ」のお尻、俺とお揃い!
みんなにも見せてやりたかった!
俺は黄色いナガグツのことなんて、いつのまにか忘れ去っていた。
こうやってみんなでワイワイやってるほうが、ナガグツより、断然いい。
それにしても、ママってほんと、おっちょこちょいで抜けてるぜ。俺の泥棒にも気づかないしな!
🍼大泥棒の大反省会だぜ
「パパ」は大慌てで保育園に戻って、黄色いナガグツを返してきてくれていた。
保育園では、ちょうどナガグツがない!と困り果て、帰れなくなっていたお友達がいたそうだ。
パパ「なんで片方だけないんだろうって、悲しそうにしていたところに、ちょうどパパが到着したんだよ」
俺はショックだった。
俺が黄色いナガグツ欲しい!って、
その時の気分で大泥棒したせいで
悲しいんでいた人がいたなんて。
俺はヒトを幸せにする泥棒になりたい……
そう、鼠小僧のような……俺、ネズミ年だし……
はー、ゆらゆらきもちい……あうあう……
すやぁ……😴
〜余談というか、読んでくれた感謝〜
おはよう!
そんなわけで、昨日家に帰ってからは、ご飯食べてお風呂入ってミルク飲んで寝たぜ!
今日は保育園はお休みらしい。
「ママ」も「パパ」も家にいて、みんなで遊ぶって言ってたから、楽しみだ。
はは、ついつい楽しくなって話しすぎちまったな。
こんな長い話をここまで読んでくれた人がいるなら、めちゃくちゃありがとうだ。
また、俺の話を聞きに来てくれよな。
じゃ!そろそろモーニングコールといきますか!
いい1日を!ばぶー!
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