見出し画像

#9.歌詞 「鏡よ、鏡。」

鏡よ、鏡。

                                          作詞      月伽 鳴


ある時僕は鏡を見た。
写っていたのは子供の頃の僕だった。
線画の記憶が鮮やかな絵の具で塗られていく
あの頃の僕は子供ながらに 
このままずっと続くと思っていた。

鏡よ、鏡。教えておくれ。
ちゃんと前に歩けているか?
季節が移り変わるように 見ている景色も変わっていった
君は笑顔で手を差し伸べる
僕は首を横に振る
「今、生きているのはここだから。」
君は楽しそうに鏡の向こうへと走り去った。

ある時僕は鏡を見た。
君は悲しそうにうつむいた。
辛い記憶が涙と一緒にこぼれ堕ちる
忘れかけていた 心の傷
「君は今でも抱えているんだね。」

鏡よ、鏡。教えておくれ。
ちゃんと前に歩けているか?
地面に書いた落書きの様に 時間が過ぎれば薄れていく。
僕は鏡に手を当てる
「大丈夫。辛いのは今だけで、君はこの先、幸せだから。」
君は声を殺して泣き喚いた...

それからふたりで笑い合った。
乾いた時間が過ぎていく
「そろそろ行くね。」と僕は言う
「ありがとう。」と君は言った。
もう会うことはないのだろうと
鏡に背を向け歩き出した。

鏡よ、鏡。教えておくれ。
ちゃんと前に歩けているか?
季節が移り変わるように 見ている景色も変わっていった
「あの時があったから、今の僕があるんだよ。」
そう聞こえた気がして振り向いた
鏡に写っていたのは 今の大人の僕だった。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?