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眩しく尊いもの(妄想小説)

『もしもし、わたし』
『ん。知ってる』
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彼のこういう言い回し方が好きだと思う。
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眠そうにくぐもった声がスマホの奥からする。
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『寝てたの?もう昼よ?』
『……起きたよ、今(笑)』
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パチン。
パチン。
私の耳が彼の行動を探る。
空気清浄機にスイッチを入れて歩いている。
なんと、彼の家には8台も空気清浄機があるのだ。まず朝起きて少なくとも5台のスイッチを入れてあるく。
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『今何してんの?』
『仕事。今日は平日の真っ昼間よ?』
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バタン。
カチャ
カラカラカラ……。
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彼の織り成す生活音が何よりのBGMだと感じる。
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『会いたい?』
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私はドキドキしながら聞いてみる。
別に。とか、用事あるから。とか言われるリスクが大いにあるけど……。
彼の声で会いたい。と聞きたかった。
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『(笑)会いたいよ。……って言えばいいの?』
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笑いながら、飲み物を啜る音がする。
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彼の笑顔が浮かぶ。
広角が少し上げると口元にエクボが出る超絶可愛い笑顔。
そして、80点な受け答えに私はキュンとなる。
いや、むしろ20点分私をジリジリさせるので満点かもしれない。
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『言わせたみたいじゃない』
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『会いたいよ(笑)いい子だから……早くおいで』
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彼の言い回し方が心底好きだと思う。
くすりと笑うタイミングも、声のトーンもスリッパを鳴らしながら歩く音も。
彼の咳払いも、鼻歌も美しい横顔もすべてが尊い。





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