楽天ショップ・オブ・ザ・イヤー受賞を支えるデザインチームが大切にしている成功循環モデル
みなさんは、ネットショッピングをする時に、インターネット上に無数にある商品の中からどうやって欲しい商品を見つけますか?
きっと、商品画像や説明文を見て選ぶのではないでしょうか?
スマホケース・アクセサリーの通販店として、2004年度から通算9度目の「楽天ショップ・オブ・ザ・イヤー(楽天市場に出店する店舗の中からベストショップを決定する表彰制度)」を受賞したHamee(※)では、お客様にネットショッピングを楽しんでいただくために、写真や文章で商品の魅力を伝える商品ページの制作や、最近ではSNSや動画制作にも力を入れています。
※2020年度は5万ショップ以上の中から、「スマートフォン・タブレット・周辺機器部門ジャンル大賞 ダブルイヤー賞」を受賞。
商品ページのデザインチームを率いる田原朋子さんに、ネットショップの最前線で日々どんなことを大切にしているのか聞いてみました。
部門を超えた連携
――商品ページは、どんな工程で出来上がるんですか?
商品を製造・管理する部門に商品の仕様や納期を確認し、ネットショップを運営する部門に商品ページの構成や、何を打ち出すのかを相談してから、実際に商品ページをデザインしていきます。
完成したページは必ず他のデザイナーに見せて「こっちの写真や文章の表現の方がわかりやすいよ」と意見を出し合い、さらに連携する他の部門にも確認してもらって、よりお客様がわかりやすい表現を選んでいます。
通常は、月間約100SKU(ストック・キーピング・ユニット=商品の種類数)分の商品ページを掲載していますが、iPhone発売前の繁忙期には社外の制作会社と連携して月間約300SKUを掲載しています。社外にお願いすることで、写真撮影に時間を使うことができるので大変助けられています。
人と人の関係性を大切にする
――どんな経緯で今の制作フローが出来上がったんですか?
今でこそ、販売部門と連携しながら制作を進めていますが、以前は、制作方針の打ち合わせが足りなかったりとコミュニケーション不足が原因で、一週間かけて完成した商品ページがイチから作り直しになる、なんてこともありました。作った商品ページをお客様に見ていただけないのは残念でしたが、次に生かせるチャンスだと思うようにしました。
以前は、デザイナーも販売部門やカスタマーサポート部門と同じ部署の中で仕事をしていましたが、デザイン部が独立したことをきっかけに、それまでの常に大量の在庫に追われていた状況を見直しました。事業部が一丸となって取扱商品を6000SKUから2000SKUへと大幅に削減して、関係者全員が在庫の状況を把握できるようにしたことで、徐々に同じ目線で販売時期や制作リソースについて話し合える関係性ができてきました。
――関係性を築く上で、大切にしていることはありますか?
相手の意見をしっかり理解するよう努めています。
意見交換を重ねながら、お互いがwinwinになる事を心がけて話を進めることで、時間をかけて関係性を築いていきました。
デザインチーム内には、職人気質で寡黙なデザイナーが多いので、1日3回は話しかけて、他部門との橋渡しになることを意識していました。
関係性を良くすると、組織として良い結果が生まれて、それがさらに良い関係性に影響を与えていくというサイクルを「組織の成功循環モデル」というそうです。
“人と人の関係性を良くしていくことを大事にすると最終的には組織として良い成果を生み出し、それがさらに関係性に良い影響を与えていく”(出典:組織の成功循環モデル|株式会社SDIコンサルティング)
――2004年度から通算で9度目となる楽天ショップ・オブ・ザ・イヤーの受賞ですが、どんな気持ちですか?
実は、以前は販売部門の功績という感じがして、かなり他人ゴトな時期もありましたが、今は素直に嬉しいです。
商品力や販売部門の力も大きいのですが、販売部門と一緒に考えた商品ページが楽天上半期総合ランキングで総合13位、スマートフォンジャンルで1位をいただくことができて、成果が出て良かったなぁと安心しました。
変化の激しいEC業界で結果を出すために
――20年以上ECを続けていると、こうすれば売れるという勝ちパターンが出来てくると思います。時代とともにお客様の価値観も変わりますが、日々どんなことを求めて変化しているんですか?
商品のブランドコンセプトを大切にしながらも、お客様が一目でどんな商品なのかがわかる商品ページを追求しています。
商品が持つ世界観をブレずに表現することで、その商品を届けたいお客様に見つけてもらいやすくなります。イメージに強く共感してもらい、長く愛していただける商品を扱うHameeブランドとして認知されることを目指しています。
ネットショップでは、手にとって商品を確認できないので、撮影の際に小物の使い方やライトの当て方を工夫して、その商品を使ったときにどういう体験ができるのかを、お客様が想像しやすくなるように心がけています。
女性向けのモバイルアクセサリーブランド「salisty(サリスティ)」の商品ページでは、それまで商品だけだった写真をモデルさんを入れて撮影し直したことで、購入率が約150%にアップしました。
近頃は、商品やブランドを知っていただくために、SNSを通して届きやすくしたり、受け入れていただくことにも力を入れていて、Instagramで写し方を研究して流行を取り入れながら、どのくらい反響を得られるかを試しています。
女性向けモバイルアクセサリーブランド「salisty」のお仕事
――デザイナーにも自分の好みがあると思うのですが、商品ブランドの世界観とのバランスは、どうやってとっているんですか?
仕事を褒められたとしても「成長しきった」と思っているメンバーは誰もいません。たとえば写真撮影に関しては、世の中のフォトグラファーの仕事を見て、「こんなに上手い人がいるなら、自分たちはまだまだだよね」とメンバーと話しています。今後もどんどんスキルを伸ばしていきたい気持ちが強いです。
職人気質のチーム
――デザインチームは、どんな雰囲気ですか?
チームメンバーは、プロ意識が高く、納品が差し迫っていても妥協しません。
撮影する商品の数が多くて、制作の時間がない時でも「いや、もう一回やろう!」と、担当関係なく助け合う雰囲気があります。
ベテランのデザイナーは会社の雰囲気を熟知しているので、完成した写真にHameeらしさが現れます。
ECサイトの仕事以外にも、卸先に自社商品を提案するための書類、店頭やギフトショーなどの展示会場を飾るPOPのデザインをしています。
忙しい時はパネルのカットを手伝ったりと、みんな仲がいいです。
▲音声メッセージロボット「Hamic BEAR(はみっくベア)」のInstagramのお仕事
――店頭POPから動画までと、多岐にわたるデザインをされていますが、田原さんが働くモチベーションはどんなところにあるのでしょうか?
写真やデザイン、文章を考えたりすることが好きなのはもちろんですが、チームメンバーが好きなことが大きいです。
人に恵まれて仕事がやりやすい環境なので、少しでもみんなが働きやすくなるように、他部署の人とも1on1をしたり、積極的なコミュニケーションの改善に力を入れています。
時々チームメンバーの仕事を見て「え?こんな写真撮れるの?」「こんなに写真うまくなっちゃったの?」と上達ぶりに感動することもあります。
私は美大でデザインを学んだわけではないので、それがコンプレックスでしたが、同じデザイン部内の他チームのデザイナーに週1で授業を開いてもらい、デザインを教えてもらっています。社内に成長の機会があることは、ありがたいです。
▲社内スタジオで撮影の様子
まとめ
――デザインって売上につながりますか?
以前、お客様がスマートフォンで閲覧しやすいようにと、商品ページのデザインをシンプルに変えところ、売上が下がってしまいました。
「これはマズイな」と思っていた矢先に、ショッピングモール側の仕様が、シンプルなデザインへと変更になって、結果的に先手を打てた形になりました。これを機に、売れるデザインについて販売部門とディスカッションをする流れができました。これからも意見を出し合いながら、より良い形に変えていきたいです。
デザインに力を入れることで、お客様に購入していただける確率が上がることが検証結果の数値に現れています。写真を使ったイメージづくりに強みを活かせるチームなので、これからもそこに重点的に力を入れて、売上に貢献していきたいです。
田原 朋子
2014年入社、デザイン部ビジュアルコミュニケーションチームリーダー。
大学は英文科だったが、なぜかデザインの道へ。アプリ運営・制作会社で、ライセンス系の絵文字や待ち受け画像を作っていた。
編集後記
困っていることも長く続くと、自分の仕事はこういうものなんだと信じて疑わなくなってしまうことってないでしょうか?
自分たちだけでは解決できない問題も、少し視野を広げて、周りの人に意見を聞いたり、知恵を出し合いながら力を合わせていくと、思いがけない方法で抜け出せることがあります。
Hameeのネットショップの背景には、畑を耕すかのように、協力する部門と良い関係を築いて、仲間が働きやすい環境をつくる田原さんの地道な取り組みがありました。
一見遠回りのようですが、結果的に問題解決のスピードがアップして、大きな収穫が得られます。
その原動力は「チームメンバーが好き」「人に恵まれている」という田原さんの言葉に現れているように思いました。
仲間の笑顔があふれる環境だからこそ、仕事に注力することができる。
それが、Hameeのバリュー「笑顔と入魂」なのだとあらためて感じることができました。