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滋賀県のサウナ① 水口温泉つばきの湯

 何となくここのところ、考えすぎてしまうことが多い。
 ぱっと答え出して、切り替えて、ってすればいいはずのものが、なんとなく、ずるずると。
 それに、朝も目覚めがよくない。目覚ましを止めてもまだ眠気に襲われて、ベットから起き上がるのが、いつもよりも重たい。
 まあ、ここのところとは言わず、基本的に朝は弱いのだけど。二度寝だって別に当たり前っちゃ当たり前なんだけど。
 それでも、なんとなく。
 なんてことを、春が近づく休日の、空いている伊勢湾岸道を進みながらに思った。


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水口温泉つばきの湯
滋賀県内でも有数の高温サウナとナノミストサウナの銭湯。

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 伊勢湾岸道を真っ直ぐに進むと、新名神高速へ自然と切り替わる。その先を少し進むと甲賀土山ICが現れる。
 そこで高速を降り、20分くらいでつばきの湯に辿り着いた。

 ここは、滋賀県内で温度が高いと言われているサウナらしい。そして、水風呂もとても強烈らしい。
 それを風の噂で聞いて、今日はここまでやってきた。
 その理由は、サウナに入ると、すぐに分かった。
 タワー型サウナの1番上の段が普通よりも高い位置にある。それに、サウナの入り口が1番下の段と同じ位置に、さらには、熱源の隣にあるもんだから、サウナ室内の温度が高く維持できる設計になっていた。
 ひとまずまずは、下から2段目あたりで1セット目を…。

 サウナ室から出るとすぐ隣に水風呂がある。
 小さめの浴槽で、底が深いタイプ。このタイプは底に冷たい水がたまりやすい。
 人は足の裏で感じた温度に体温が影響されると言う。だからこういった浴槽では、水温よりも冷たく感じるものだ。
 それに浴槽内には水流が常に作られている。水流にとって、常に冷たい水が体の表面を攻撃してくるので、体感はより冷たくなる。
 だから、そうか。
 体感温度が随分と冷たく感じるようになっているのだな。

 木の屋根の下、広い露天風呂。
 それを取り囲むように整い椅子が多めに置かれていて、ゆっくりと外気浴の時間を確保できる。
 椅子が多く置いてあることは、もうそれだけで嬉しい気持ちにも、安心する気持ちにも、なる。
 そんなことを感じながら、まだ冷たいままの季節の風を感じながらゆっくりと外気浴をしていると、露天風呂の奥にナノミストサウナがあることに気がついた。

 中に入ると、温度はそんなに高くない代わりに、とても湿度が高い。
 蒸気が充満しているので、目が慣れるまで歩くのが少し慎重になる。
 そして硬い長椅子に座る。
 低温高湿度のサウナは、一般的なサウナとはまた違った感覚を味わえる。
 岩盤浴ともまた違うと思うけれど、体の中からじんわりと汗をかいていくため、どちらかと言うと岩盤浴と近いのかもしれないなって思う。
 ここではその蒸気がナノサイズのミストになっているらしく、蒸気が軽い感じがした。


 そうやって何セットか繰り返し、タワー型サウナに座っていた時、体の中から、何かが溶け出していく感覚があった。
 お腹あたりにあった何か。
 それがすうっと、溶け出していく。
 ああって思った。
 これはきっと、気持ちの焦点が変なところにあって、それがせき止めていた何かなんだろうな。
 なんとなく、気の流れみたいなものが体の中に留まってしまっていたのだな。
 なんて思った。
 それが、きっと、原因なんだ。
 気持ちの焦点が、少し、内側にあった。そのせいで、何かが体の内側で停滞していたんだ。
 気持ちが前を向いているかとはまたちょっと違うのだろうけど、でも、似てはいるのかもしれない。
 考えすぎてしまうこと、同じ悩みを繰り返してしまうこと、うまく切り替えができないこと、朝の眠気が重たいこと。きっと、これが原因だったんだな。
 高温のサウナにて流れる鳥のアニメをうっすらと聞きながら、そんなふうに体の中に溜まっていた何かを、気持ちの焦点を外側にずらすことで体の外へ出ていく。


 体の中にあった何かを出し切った後、食事処へとやってきた。
 ここは、入場と特定の定食合わせたチケットが売っていて、今回はそれを購入していた。
 その時すでに決めていた、生姜焼き定食を注文し、セルフサービスの水を取りにいく。
 私はサウナ施設の食事処が好きで、よく利用している。そして大体は、生姜焼き定食を注文する。特に理由はないけれど、きっと、サウナの食事処は生姜焼き定食でしょう、という体になってしまっているのだ。
 それを待つ間、椅子の背もたれに体重を預けながら、ぼうっと、とても軽い気分になっていることを改めて実感する。
 コップから体の中へセルフサービスの水がすーっと流れていくのを感じられる。
 なんだか、そんなふうな何かが体で停滞していたこと、気が付かなかったな。
 でも、気が付かないものなのかもしれない、日常生活の中にいると。
 そういうこと、案外多い気がする。誰かと話して気がつくこと、何かを見て気がつくこと。
 だからきっと、固定化された毎日じゃいけないんだろうな、なんてことを思った。

 そして生姜焼き定食がやってきた。
 いろんなところがいろんな味付けをしていて、同じであって、同じではない生姜焼き定食。
 これは、その中でも、とても美味しいと感じた。
 体の中にあった何かを出し切った後だから、そう思うのかもしれない。
 まあ、美味しいと感じる理屈なんて、おそらくたくさんあるのでしょうけれど。
 誰かと食べるご飯は美味しい、久しぶりのご飯は美味しい、馴染みのあるご飯は美味しい、などなど。
 きっと、もっと、たくさん。
 でも、美味しいんだ。
 それだけで、十分な気がした。


 とても心地がいい気分を抱えながら、なんとなくいつも混んでいる、名古屋に向かう新名神高速を、私は帰って行く。





水口温泉つばきの湯






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