贔屓の引き倒し
私は大洋ホエールズ時代から40年来のゆるやかなDeNAファンだ。早くも貯金9という今シーズンの快進撃にはワクワクさせられっぱなし。きのうのデーゲームのバウアー投手初登板も、読書タイムを放り出してテレビにかじりついて応援していた。監督でもないのに「ケガのオースティンが復帰してもどこを守らせりゃいいのか」という嬉しい悲鳴をあげている。
きのうの夜はBS日テレから地上波へリレーされた巨人対ヤクルトをなんとなく眺めていた。
リーグ2連覇中のヤクルトは三冠王・村上の超不振もあって、気になる存在。逆に言えばセ・リーグその他の4球団にはほとんど興味がないところ。
この日テレの中継が酷かった。
珍しく地上波中継もやるとあって解説とゲストは松井秀喜・高橋由伸・上原浩治と巨人OBを並べる力の入れよう。その3人が試合そっちのけで“巨人お仲間トーク”をグダグダと垂れ流すのだ。もちろん実況アナはかなり露骨に巨人びいきのアナウンス。
かのテレビ局では“自分たちのチームだから”という雰囲気が当たり前なのかもしれない。
しかしその放送内容は「球界は巨人を中心に回っている」「巨人が勝つことがプロ野球の隆盛」という30年前の“天動説”から一歩も進化してない。
なにも放送法第四条の「政治的公平」などという大げさな問題ではない。しかしこの硬直化した“俺サマ思想”は、各球団の努力でセもパもほぼ均等に地元の集客をすることができるようになった21世紀のプロ野球に対する冒涜ではないか。
そんな昭和のまんまの放送をやってしまうことは、時代に取り残されてしまったテレビ媒体の衰退も浮き彫りにしてしまった。若いスタッフはあんな放送を出すことが恥ずかしくなかったのだろうか。
サンテレビやデイリースポーツが阪神びいきをやるのは「ローカル局や新聞としての明確な特色・スタンスを打ち出す」というコンテンツ戦略。日テレの傲慢さとは一線を画すものだろう。
かつては「巨人が負けるところが見たい」という層がいて「アンチもお客さん」という考え方も確かにあったのだろう。
しかしこれだけ娯楽が多様化して地盤沈下が顕著なテレビコンツがそんなことを言っていられるのか。「不愉快で面白くないから見ない」。そんな時代になっていることもわからないのか。
贔屓の引き倒し。プロ野球への冒涜であるだけではない。テレビへの侮辱である。
(23/5/4)
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