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災害に“暦”はない

 能登地方できのう発生した震度7の地震。大津波警報が発表されたこともあり、発生から16時間が経ったいまもNHKはニュースを続けている。このあたりに災害報道へのNHKの本領発揮ぶりを感じる。

 元日の夕刻の発生である。私の古巣であるテレビ局も年末年始はニュース枠が極端に減るので、その瞬間に報道局に滞在していた人数は最低限の“留守番”だけだったはずである。私も、もしいまも報道に在籍していたらきのうはおっとり刀で駆けつけなければならなかったところだ。

 新聞社はどうだったのだろう?

 かつて紙だけを出していた時代だったら、翌日が休刊日の元日の社内はそれこそガランとしていたことだろう。ネットにニュースを出す現代でもそれに毛が生えたようなものか。みんな息せき切って駆けつけたに違いない。

 それでも。

 次の紙の新聞発行は3日の朝刊である。発生から3日目の朝に「能登で震度7」と読まされても、NHKや民放でさんざんニュースを見てきた読者は「はあ?」という感覚になるに違いない。

 こういう際に新聞社が発行するであろう「号外」も今回はどうだったのか。なにしろ印刷工場も配送もすっかり休暇態勢。「人員をかき集めて、印刷して、運んで、配布する」などという“芸当”はとてもできなかったのではないか。

 思い出すのは2020年のオリンピック開催地を決めたIOC総会のことだ。

 ブエノスアイレスでIOC=国際オリンピック委員会のロゲ会長(当時)が「トーキョー!」と紙を見せて滝川クリステルらが飛び跳ねていたのが現地時間2013年9月7日=日本時間では8日午前5時すぎ。この日は日曜日で夕刊がないため、通常であれば次の発行は9日(月)の朝刊。ところが9日は休刊日に設定されていたため、その日の夕刊でやっと「2020年のオリンピックは東京に決定」が掲載された。決定の瞬間からざっくり36時間後。国民があれだけ固唾を呑んで見守っていた投票結果を紙の紙面ではそんなタイミングまで伝えずにいたのである(夕刊がない地域では火曜日の朝刊が初掲載)。

 災害や事件などの“発生モノ” ならいざ知らず、開催地が決まるIOC総会の日程はずっと前から判明していた。週刊誌があとから書いたところでは「休刊日を移動させようという」議論は特に出ないままだった、という。

 災害に暦はない。今回の震災でも、新聞のニュースメディアとしての存在の真価がまた問われてしまうことになった。
(24/1/2)

 

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