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【さっき見たヘンなユメ】静かなビルの中で

券会社の集中するオフィス街を、2体に分裂した妹と3人で、仲良く談笑しながら散歩している。辺りには、透き通るようなガラスの高層ビルが立ち並び、どんよりした灰色の空を反射する。

きしむような異音が頭上から響き、何事かと私や妹たちが上空を見上げると、目の前のタワー型ビルがバリバリとすさまじい轟音を立てながら崩壊をはじめている。

まるで透明の巨人に握りつぶされているかのように、建物の中腹部が不自然にゆがみ、亀裂音と共に大量のガラスの破片や鉄骨が降り注いでくる。

「このビルは存在が不安定になってる」
「中に隠れよ」

やけに冷静な妹たちにそう言われて、私たちはビルの内部に逃げ込んだ。

ビルの中は、びっくりするくらい静寂に包まれていて、外の騒音はかすかにしか聞こえてこない。そこはエントランスホールのような空間で人の気配はなかったが、中央にある観葉植物から、中型犬ほどの大きさの黄色いイモリがぬるっと現れ、妹Aをぺろっと咥えて上の階に逃げていってしまった。

私が慌ててイモリを追いかけようとすると、妹Bがいぶかしむような顔をして言った。

「わたし、ここにいるよ?」

その言葉が何を意味しているのか分からず私が固まっていると、地響きと共にビル全体が再び崩壊しはじめ、ガラスやコンクリートの塊がなだれ落ちてきて、あまりのうるささに私は目を覚ましてしまった。

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