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【さっき見たヘンなユメ】便器にうまる男

レガントな雰囲気の美術館で妻とデートしている。

あちこち点在するホールに和製の陶器や織物の展示物がならび、ある部屋ではDJがチップチューンのミックスを披露している。平日だったからか来場者はまばらだ。

しばらく展示を見たあと、通路にあるソファに腰かけていたら、私は急に腹痛と便意に襲われたので、妻にしばらく待つように伝えてトイレに向かった。夢の中でも過敏性腸症候群が引き継がれるのかと思い、少々ウンザリしてしまう。

なかなか施設内のトイレが見つからないので、私は併設されている喫茶店でトイレを借りようとした。メイド姿の給仕が「お手洗いは有料エリアにございます」と言って、私に高級そうな皿を一枚手渡してきた。どうやらそれが入場パス代わりになるらしい。

有料エリアに入ったもののトイレの場所がすぐにわからなかった私は、スイングドアがあるのを見つけて中を確認してみたが、そこはドリンクバーだった。

ようやくトイレを見つけて、老朽化による汚れは我慢して便座に腰を下ろすと、シリコンのような材質の便座がグニャっと曲がって私の臀部もろとも便器内にのめり込み、ものすごい量の水や汚物が逆流して辺りに飛び散ってしまう。

身動きできなくなり、どうしたものか熟考していると、おもむろにトイレのドアが開き、二人の暴力団員が中をのぞき込んできた。片方の男は顔半分が火傷の痕に覆われている。「閉めてください」と私は叫んだが、ヤクザたちはニヤニヤにしてしばらくのぞき続けてから、ようやくをドアを閉めた。

私はヤクザと揉めたくない一心で便器からなんとか抜け出し、体を拭いて身なりを整えると、「どうぞ」と一声かけて、汚物と割れた皿と私のパンツが散乱し水浸しになったトイレを譲った。

妻を30分以上も待たせていることを悔やみながら戻ろうとするが、どういうわけか先ほどのソファが見つからない。その美術館は、上下の階層や曲がりくねった通路が重なりあった複雑な構造で、私は同じような光景のスポットを何度も行ったり来たりしながら、次第に焦りはじめる。

こんなに長時間待たされたら妻はきっと腹を立てているだろう。それでもきっと私のことを心配して、戻ったら笑顔をみせてくれるだろう、そんなことを考えているうちに、いつの間にか目を覚ましていた。

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